百名山の浅間山・四阿山・本白根山に囲まれた避暑地・嬬恋村。長年別荘として利用していた家に定住した工藤さん夫妻は、趣味のトライクやガーデニングを楽しみながら、村おこしサークルにも参加。「今まで村からいただいてきたたくさんの楽しみや幸せに恩返ししたい」と、さまざまな活動に精を出している。
掲載: 田舎暮らしの本 2023年7月号
両親も愛した別荘に住み
村に幸せの恩返しを
2000m級の山々に囲まれ、村域のほぼすべてが高原地帯の嬬恋村。浅間山北麓に広がる別荘地には避暑で訪れる人だけではなく、高原の四季に魅せられて定住している人も多い。
奇勝・鬼押出し近くの別荘の日当たりのよい庭で、楽しそうにおしゃべりをしながらヨモギを摘むご夫婦の姿があった。長年、この地で別荘ライフを楽しんだのち、2021年から村民となった工藤聡(くどうさとし)さん・惠美子(えみこ)さん夫妻だ。
「昔、友達が嬬恋に別荘を持っていて、よく遊びに来ていたの。短大で専攻していたホテル観光学科の実習も軽井沢だったし、昔からこのあたりになじみがあったのね」(惠美子さん)
惠美子さんと惠美子さんのご両親は高原の気候が好きで、よく貸別荘を利用して長期滞在していたが、「帰ってこられる定
点のような場所がほしい」と2008年にこの家を購入。ご両親は春から秋をここで過ごし、当時千葉に住んでいた工藤さん夫婦も頻繁に訪れた。
ご両親が他界してからも、2人が最期まで愛した景色のなかで過ごしたいと、聡さんと惠美子さんは嬬恋に通い続けた。
「森の中に満ちている、あの凜とした空気の感じがたまらなく好きなんです。草取りなどは大変ですが、集中してやっていると大嫌いだった虫にも愛おしさを感じるようになってきて(笑)」(惠美子さん)
2021年、夫婦は完全移住することに決めた。
「転入届を出すときに、何か村のお役に立ちたいと窓口の人に話したら、農業と観光を軸に村を元気にする会『嬬恋村キャベツーリズム研究会(キャツ研)』を教えてもらいました。会員になったら、短期間で知り合いがものすごく増えたんです」(聡さん)
夏山清掃登山に参加したり、マルシェで売り子をしたり、趣味のトライクで高原ツーリングを楽しんだり……。イベントがない日も、庭で野菜を育て、風が吹き抜けるウッドデッキで本を読むなど、高原の家で過ごす毎日の楽しみは尽きない。
「僕たちは今まで、幸せや楽しみを受ける側だったのですが、これからは村に恩返しをしていきたい。夫婦で合計200歳を目指しながら、移住者だからこそ気づく村の魅力を伝える手助けができたらいいですね」(聡さん)
工藤さんの夏の過ごし方
外の空気を感じながら生活
ウッドデッキで朝食をとったり、ハンモックで本を読んだり、庭で野菜をつくったり、浅間石が置かれた庭でガーデニングを楽しんだりと、いろいろな趣味を楽しむ工藤さん夫妻。万座や草津など、近隣の温泉までトライクで近距離ツーリングを楽しむことも。
「星がよく見えるので、天体望遠鏡を買おうかと思っています」と聡さん。
文/はっさく堂 写真/尾崎たまき
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