日本を代表する金属加工産業の集積地、三条市。製造業をはじめ企業活動が盛んな、ものづくりのまちは、豊かな森や緑の田園に囲まれた、自然にとても近い場所にある。歴史のなかで培った技と創意工夫の気風が、今日も新しい何かを生み出している。
掲載:2023年8月号
新潟県三条市
三条市は「石を投げれば社長に当たる」といわれるほど数多くの中小企業が活動する。大型スーパーや学校、病院がある都市部から車で約30分の下田郷ではアウトドアや温泉が楽しめる。東京から上越新幹線で燕三条駅まで約2時間。車の場合、東京から北陸自動車道三条燕ICまで約4時間。
スノーピークの本社がある下田郷は自然豊かな場所
江戸時代の和釘づくりに始まり、金属加工産業のまちとして発展してきた三条市。市内は、さまざまな施設が揃う市街地と、自然豊かな下田郷(しただごう)に大きく分かれる。ものづくりと自然環境の両方に恵まれたことから、数多くのアウトドアメーカーが活躍しており、アウトドアのまちとしても知られている。
日本を代表するアウトドアブランド、スノーピークの本社は下田郷の丘陵地帯でキャンプ場を併設(総敷地約15万坪)。販売した製品を使う場所を提供するほか、スノーピーク製品を借りて手ぶらキャンプも楽しめるなど、顧客との絆を育んでいる。
ものづくりの職人が集う地域で「本当に欲しいものを自分でつくる」というスノーピークの思想は、創業者から後継者の山井太社長に受け継がれ、「日本にまだないオートキャンプという文化をつくろう」という思いのもと、人と人をつなぐことで発展を遂げた。同社が掲げる「人生に、野遊びを。」という言葉は、自然のもとでの人間性の回復を意味する。いまや全国各地からアウトドアに魅力を感じる人びとが入社を希望する企業となり、本社社員の多くが県外出身だ。
三条市は移住支援に積極的な施策を打ち出しており、移住コンシェルジュを設置したほか、移住者が情報交換できる交流拠点もあり、地域のなかでスムーズに、人と人が縁を結んでいける工夫がされている。
「ちょうどいい場所」でものづくりをする暮らし
三条市は、金属加工とともに木材加工も盛んだ。長谷弘(はせひろ)工業がつくる特殊な構造のバックロードホーンスピーカーは、目の前に演奏ホールが出現したような奥行きを生む逸品。開発の原動力は、長谷川安衛社長の「人と違うものをやりたい」という意欲だ。つくりたいものに合わせて鍛造、鋳物、木工と、技術を蓄積してきた企業の成果でもある。
こうした長谷弘工業の精神に魅力を感じて就職を決めたのが、昨年三条市に移住した綾部洋一さんだ。綾部さんは、ものづくり自体が初めて。製品を1つつくるのはとても大変だが「形になるとうれしい」と手応えを実感している。
綾部さんが三条市に抱く感想は「ちょうどいい」ということ極端に混み合うわけでも、何もないわけでもない生活は、車があれば山にも海にも30分ほどで行けるバランスのよさが魅力。水田を見ながら心地よい風を感じ、夕日の光景に心を動かし、仕事終わりに温泉へ行くなど、新鮮な毎日を送っている。
綾部さんの趣味は写真。趣味に打ち込む時間も、三条市への移住で確保できるようになり、最近では個展も開催することができた。
綾部さんの採用を担当した長谷川貴一専務は、県外からの移住者採用の結果、アイデアや知識の幅が広がったと話す。
伝統を守りながらも新たな挑戦をしつづける「ものづくりのまち」三条市なら、移住者の経験や視点が活かせることだろう。
三条市の人気の秘密!
□ものづくりをはじめ魅力的な企業が多い
□都市と自然のバランスが「ちょうどいい」
□移住支援制度でサポートも補助金も充実
□キャンプ場や地元産のギアも豊富
□新規の出店や施設が集積する中心市街地
三条市移住支援情報
移住コンシェルジュが検討から就職までサポート
最初の相談から、就職、住まいの紹介まで、自身の移住体験をもとに移住者を支える移住コンシェルジュが常駐している。企業訪問、子育て支援施設など、希望に合わせて三条市の暮らしを1泊2日で体験できる「オーダーメイド移住体験」も実施。さらに三条市では、空き家バンクや多様な補助金など、さまざまな支援を用意している。
問い合わせ先:三条移住コンシェルジュ ☎080-6975-2026
問い合わせ先:三条市地域経営課 ☎0256-34-5646
移住定住支援サイト「三条で暮らす」
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文/丸山和昭 写真/シン・クリエイティブ 石井達
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