国内シェアトップのメガネをはじめとする数多くの地場産業や伝統産業を継承する鯖江市。県外から移住者を呼び込みたい行政、人手不足の企業、職を必要とする移住者の三者を直接つなぐ「三方良し」の移住支援策を紹介する。
掲載:2023年8月号
「ものづくり」の魅力や歴史、つくり手の思いに触れるイベントも
鯖江の特産でまず頭に浮かぶのは、メガネという人も多いだろう。その国内シェアは97%を誇り、断トツの日本一だ。1500年の歴史を持つ越前漆器も業務用の国内シェアが80%を超える。さらに周辺には、越前焼や越前和紙、越前打刃物、越前箪笥などの産地が半径10km以内に点在し、ものづくり文化の一大集積地になっている。
それらのつくり手が見学会やワークショップを一斉に開き、参加者がその思いや歴史に触れられるイベント「RENEW」が毎年行われている。事務局長の村上捺香さんは、2019年にこのイベントに参加したことをきっかけに東京から移住した。
「ちょうどコロナ禍でしたが、自粛ムードに屈せず、新しい価値観を築こうと挑戦的な職人さんが多いことに驚かされました」
と村上さんが振り返るように、それらの地場産業は年々結束力を増し、2022年のイベントに参加した企業は100社を超え、ワークショップの数は51に及んだ。
そして、RENEW事務局は鯖江の産業観光を通じて持続可能な地域づくりを目指す一般社団法人SOEへと成長。その専務理事でもある村上さんは、
「これまで年1回だった企業のワークショップを通年開催できるように準備しています」
と抱負を語る。ほかにも宿の開業やメディア運営など、新たな事業を展開する計画だ。
働きやすい職場と就職奨励金20万円
鯖江市総合政策課の太田弘純さんは、「まちの未来を担う若い移住者が暮らしやすいよう、行政と企業が連携を始めています」と言う。
これは仕事と生活の両立に積極的に取り組む企業を「子育て世代応援企業」に認定し、そこに就職した移住者へ「子育て世代応援企業移住就職奨励金」として20万円を支給するものだ。企業は認定を受けることで県外からの人材確保に有利になる。
その応援企業で、越前漆器の木地技術を木製雑貨の製造販売に生かすHacoa(ハコア)に昨年就した仲矢昇平さんは、この奨励金受給者の1人だ。
「高いデザイン性にひかれたと同時に、開放的な工房を見て最先端の伝統工芸を感じ、ここで働きたいと思いました」
と仲矢さん。奨励金は新生活を始めるために役立ったという。
鯖江の移住支援制度はまだある。東京23区からの移住を対象にした「移住支援金(東京圏型)」は、世帯で100万円を、それ以外の地域からでも「移住支援金(全国型)」として世帯で最大25万円を支給。さらに、子どもがいる場合は支援が加算される。適用には複数の条件があるので、まずは市の総合政策課に確認してほしい。
鯖江市の人気の秘密!
□ 県内で唯一、人口が増加しているまち(※2020年国勢調査調べ)
□ 県庁所在地の福井市や古くから“越前国”として開けた越前市に隣接したベッドタウン
□ コンパクトなまちの中心に国道や県道が通る、交通利便性が高いまち
□ 日用品が豊富でオシャレな飲食店も多い、生活利便性が高いまち
鯖江市移住支援情報
住まい、起業、就農など多彩な支援制度で移住者を歓迎!
「住み続けるまちさばえ支援事業」では、空き家の購入費用やリフォームに対して最大各60万円を補助。「創業スタートアップ支援事業補助金」では、初期の設備投資に最大30万円を補助。「新規就農者経営支援事業」では、認定を受けた新規就農者への給付金制度がある。ほかにも移住者が対象となる制度がいろいろあるので確認してみよう。
問い合わせ先/政策推進グループ ☎0778-53-2263
文・写真/吉田智彦 写真提供/鯖江市、Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
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