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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

メガネ、漆器、繊維、ものづくりのまち! 若者が集まり、伝統工芸を継承・革新【福井県鯖江市】

国内シェアトップのメガネをはじめとする数多くの地場産業や伝統産業を継承する鯖江市。県外から移住者を呼び込みたい行政、人手不足の企業、職を必要とする移住者の三者を直接つなぐ「三方良し」の移住支援策を紹介する。

掲載:2023年8月号

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福井県鯖江市 さばえし
福井県嶺北地方のほぼ中央に位置し、面積が84.59㎢と小さいながらも約6万9000人が暮らし、県内4位の人口を持つ。女子高生の視点を市政に生かす「鯖江市役所JK課」を市役所に置くなど、独自の地域活性に取り組む。東京から米原経由で東海道新幹線と北陸本線を利用して鯖江駅まで約3時間30分。2024年に北陸新幹線も開業予定。

 

「ものづくり」の魅力や歴史、つくり手の思いに触れるイベントも

村上捺香(なつか) さん(29歳)
石川県出身。都内で広告代理店勤務後、2018年に独立し、プロジェクトマネジメントやウエブメディア編集、ライティングなどに従事。2020年に福井県鯖江市へ移住した。鯖江市地域おこし協力隊。 

 鯖江の特産でまず頭に浮かぶのは、メガネという人も多いだろう。その国内シェアは97%を誇り、断トツの日本一だ。1500年の歴史を持つ越前漆器も業務用の国内シェアが80%を超える。さらに周辺には、越前焼や越前和紙、越前打刃物、越前箪笥などの産地が半径10km以内に点在し、ものづくり文化の一大集積地になっている。

 それらのつくり手が見学会やワークショップを一斉に開き、参加者がその思いや歴史に触れられるイベント「RENEW」が毎年行われている。事務局長の村上捺香さんは、2019年にこのイベントに参加したことをきっかけに東京から移住した。

「ちょうどコロナ禍でしたが、自粛ムードに屈せず、新しい価値観を築こうと挑戦的な職人さんが多いことに驚かされました」

 と村上さんが振り返るように、それらの地場産業は年々結束力を増し、2022年のイベントに参加した企業は100社を超え、ワークショップの数は51に及んだ。

 そして、RENEW事務局は鯖江の産業観光を通じて持続可能な地域づくりを目指す一般社団法人SOEへと成長。その専務理事でもある村上さんは、

 「これまで年1回だった企業のワークショップを通年開催できるように準備しています」 

 と抱負を語る。ほかにも宿の開業やメディア運営など、新たな事業を展開する計画だ。

「自分で使ってみたい」と村上さんが購入した、落ち着いた光沢と華やかさを持つ越前漆器。塗りの工程を中心にさまざまな職人の手が入り、分業でつくり上げられる。

RENEWを一緒に運営しているSOEのメンバーたちと。このときに集まっていたほとんどが県外からの移住・Uターン組。「この地域を、ものづくりを求める人が最初に訪れる場所にしたい」と村上さん。

RENEWの様子。初回は2015年で、来場者が1200人だった。これに対し2022年には延べ3万7000人に達し、全国でもトップクラスのオープンファクトリーイベントに育っている。スタッフに20代の若者が多い。

 

働きやすい職場と就職奨励金20万円

右からHacoaの青山謙二専務取締役、東千尋さん、仲矢昇平さん、鯖江市産業環境部商工観光課の松田光広さん、鯖江市政策経営部総合政策課の太田弘純さん。Hacoa本社内のショップで。

 鯖江市総合政策課の太田弘純さんは、「まちの未来を担う若い移住者が暮らしやすいよう、行政と企業が連携を始めています」と言う。

 これは仕事と生活の両立に積極的に取り組む企業を「子育て世代応援企業」に認定し、そこに就職した移住者へ「子育て世代応援企業移住就職奨励金」として20万円を支給するものだ。企業は認定を受けることで県外からの人材確保に有利になる。
 
 その応援企業で、越前漆器の木地技術を木製雑貨の製造販売に生かすHacoa(ハコア)に昨年就した仲矢昇平さんは、この奨励金受給者の1人だ。

 「高いデザイン性にひかれたと同時に、開放的な工房を見て最先端の伝統工芸を感じ、ここで働きたいと思いました」

 と仲矢さん。奨励金は新生活を始めるために役立ったという。
 
 鯖江の移住支援制度はまだある。東京23区からの移住を対象にした「移住支援金(東京圏型)」は、世帯で100万円を、それ以外の地域からでも「移住支援金(全国型)」として世帯で最大25万円を支給。さらに、子どもがいる場合は支援が加算される。適用には複数の条件があるので、まずは市の総合政策課に確認してほしい。

Hacoa福井本社。1962年に越前漆器の木地師が山口木工所として創業。2001年に生活様式や食生活の変化を見据えて独自の木製品を創作するHacoaブランドを設立した。全国に13の直営店を持つ。

仲矢さんと同期の職人、東千尋さんはHacoaの木製USBにほれ込んで埼玉の家具工場から転職。「今はとにかくつくることで、技術を向上させられるようがんばります」と目を輝かせる。

大学でプロダクトデザインを勉強していた仲矢さんは、製造を1年経験した後、今春から商品開発に異動。自ら発案してつくった正方形の写真を飾るフォトスタンド。

 

鯖江市の人気の秘密!

□ 県内で唯一、人口が増加しているまち(※2020年国勢調査調べ)

□ 県庁所在地の福井市や古くから“越前国”として開けた越前市に隣接したベッドタウン

□ コンパクトなまちの中心に国道や県道が通る、交通利便性が高いまち

□ 日用品が豊富でオシャレな飲食店も多い、生活利便性が高いまち

新たな事業を展開する企業や個人が出会うコミュニティシェアオフィス「Hana工房」。運営母体のエル・コミュニティは、「鯖江市地域活性化プランコンテスト」を毎年開催。

鯖江商工会議所につくられたSABAEブランドの発信拠点「Sabae Creative Community」。最新の機材を揃えた試作開発スペースやシックな展示販売スペース、商談・イベントスペースがある。一般の人も使用可能。

 

鯖江市移住支援情報
住まい、起業、就農など多彩な支援制度で移住者を歓迎!

「住み続けるまちさばえ支援事業」では、空き家の購入費用やリフォームに対して最大各60万円を補助。「創業スタートアップ支援事業補助金」では、初期の設備投資に最大30万円を補助。「新規就農者経営支援事業」では、認定を受けた新規就農者への給付金制度がある。ほかにも移住者が対象となる制度がいろいろあるので確認してみよう。

問い合わせ先/政策推進グループ ☎0778-53-2263

鯖江市子育てセンター「にじいろ」。就園前の子どもを持つ保護者が子育ての相談やほかの保護者と交流できる。保育士や言語聴覚士、社会福祉士が常駐し、対応してくれる。

西山動物園。日本一小さな動物園だが、14頭のレッサーパンダを飼育し、国内有数の繁殖数を誇る。ほかにも、シロテテナガザルやタンチョウなどがいる。

「移住検討中のそこのあなた、きっと鯖江市がいいですよ!」
総合政策課 太田弘純さん

 

文・写真/吉田智彦 写真提供/鯖江市、Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)

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