9月22日。「移住するなら、沖縄か、新潟か」。昨日からずっと雨模様で、気温もいくらか下がってきた。野菜も僕もホッとしている。これほど苦労したことは過去にない。白菜やキャベツの苗はなかなか育たず、なんとか育ったものを畑に植えると今度は暑さにあえぎ、さらには虫が食い荒らす(猛暑でも害虫の活動は衰えない、いや逆に活発になる)。大根も人参も発芽はしたものの、強烈な光の下で力なく、そこに、たたきつける雨が降ってとどめを刺す。それでいて、生える雑草は、これまた過去にないほど旺盛に育ち、僕の仕事を増やす・・・が、畑に行って愚痴ったり、舌打ちしたりすることはない。何事も、まっ、仕方ないさ、そう思えるのは年齢のせいか・・・苗がやられたら再度タネをまき直す。腰まで伸びた草を淡々と抜く、袋に詰めて枯らす。それでいい。
梨の花が満開となった。毛虫が葉っぱを食うことはよくあるけれど、この梨の木に毛虫がいたという記憶はないなあ。今日は発送荷物が2つ。6時間がかりの作業だ。6時間のうち半分は、栗を拾う、ヤマイモを掘る、掘り上げたピーナツを選別する、さらには柿をもぐなどに費やされる。今年の柿は天候のせいで品質が一定しない。テレビのニュースでは茨城県笠間市の栗農家の人が、未熟果が多い、例年なら3粒入る実が1粒、2粒というものも多い、そう言っていた。この柿の木は、冬になったら切り下げないといかんなあ、高すぎるもの・・・脚立に乗って、さらに2メートルの収穫棒を使いながらの柿もぎは大仕事だ。
ランチタイムに見たテレビが沖縄での「水中ゴミ拾いダイバー」の話題をやっていた。30歳の女性は元は大手化粧品メーカーに勤務。スキューバダイビングが好きで沖縄に通っているうち移住しようと決めたという。面白いのは、ただ潜って楽しむだけでなく、海中のゴミを拾い集める。のみならず、そのゴミ拾いを大いに楽しんでやっているのだという。それにしても、沖縄の海は美しいなあ。収入の道を確保したうえで、ダイビングだけを楽しむというのであれば移住の候補地としては最高だろう。僕は、兄の奥さんが沖縄の出身で、しばらく兄夫婦と同じアパートに暮らしていたことがある。だから沖縄は身近な土地と感じる。はるか60年も前。20代はじめだった兄の奥さんは東京に来るのにパスポートが必要だった。
今日の朝日夕刊で「冬の日本海側、新潟市だけ降雪量少ない」という記事を目にした。日本海側には豪雪地帯が多い。僕は今でもその写真を記憶しているが、たしか昭和38年のことだったと思う。新潟方面での大雪で国鉄(当時)の列車が動けなくなった。降り積もった白い雪の中に何十両もの蒸気機関車に引かれた黒い列車が埋まっている白黒の写真。雪をほとんど経験したことのなかった僕は違う世界を見ているような気がしたものだ。しかし、今日の朝日夕刊が伝えるのは、豪雪地帯の中でなぜ新潟市だけ雪が少ないのか。その理由は佐渡島の存在にあると筑波大学の研究者たちが解き明かしたという。大陸からの季節風を佐渡島が受け止める。それを「雪陰効果」と言うらしい。かなり昔のこと、たぶん50年くらい前、何かで読んだことをそれで今ひょいと思い出している。冬、新潟から列車に揺られて上野駅に着いた女性。初めて見る東京だ。なんと明るい空だろう。その時の印象を彼女はこう言葉にした。暗い新潟に比べ、これが同じ日本なのだろうかと思いました・・・。
大学2年の時、合宿で新潟県の鯨波というところに行ったことがある。先輩の一人がこの地の出身だったらしい。僕が日本海を見たのはそれが初めてだった。季節もよかったせいだろうが、初めて目にした日本海は穏やかで美しかった。さて、もし・・・沖縄と新潟、どちらかを選べと言われたら、あなたならどっちを選ぶ? 海が好きなら文句なし沖縄だろう。しかし影響を受ける台風の数は本州よりもはるかに多い。対して、スキーで汗を流し、窓の外に舞う雪を眺めながら静かに燃える薪ストーブの情緒を楽しみたい、あるいは美味いコメを毎日食べたいというなら新潟だろう。しかし雪は手ごわい。いずれを選択するかはその人の精神と関係するだろうか。別な言い方をするなら性格的に「静」か「動」かにかかわるのではあるまいか。
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