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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月3日(月)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

人口問題を考える/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(50)【千葉県八街市】

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 2月1日「第三者から提供された卵子を夫の精子で受精させて出産する妻」。はや2月である。時間がたつのは早いねえ。昨夜10時過ぎ、雨音が聞こえ、風の音も聞こえた。またかい・・・寝床で心配したのだが、今朝、雨戸を開けるとタップリの光が降り注いでいた。さて部屋の中での育苗。電気カーペットを敷き、夕暮れから翌朝まで毛布を掛ける。そうしてどうにか育てたカボチャ、キャベツ、ブロッコリー・・・。カボチャとキャベツはすでにビニールハウスに定植した。そして今日はブロッコリーの出番である。ブロッコリーといえば、2026年から「指定野菜」に加わるというニュースが最近流れた。国民必須の野菜。価格が落ちれば国が生産者を支える、それが「指定野菜」である。僕は知らなかったが、ブロッコリーの人気は急激に高まっているらしい。一昨日の「天声人語」はこのことに触れ、最後に甲斐みどりさんのこの歌を掲げていた。

茹で立てのブロッコリーの柔らかさ春が確かに近づく予感

 残念ながら昼頃には空が薄暗くなってきた。もっと晴れていてくれればいいのに。発芽状況を見回る。3週間前に植えたジャガイモ、10日前にまいた人参、いずれもハウスの中で芽を出している。少しばかり百姓の心が浮き立つ瞬間だ。その仕事をしている時、黒いチャボが僕のそばに来た。チャボは、どれでも気立てが良いが、とりわけ気立ての良い、首回りが白、体が黒のチャボ(この下の写真の右側)がやって来たのだ。それで思い出したのは卵子提供という話・・・以前書いたことを覚えている方はおられるかな。岐阜から届いた生後3日のヒヨコ。それを、誰が頼んだわけでもないのに世話して、毎晩抱いてくれたのだ、このチャボは。なぜそんなことをしたのかと考えた・・・ひとつだけ僕が思い当たるのは、このチャボは3日前自分の子を野良猫に取られたばかりだった。ずっと鳴いて我が子の姿を探していた。その悲しみ無念さというか、愛情というかが新しいままだった。そこにいきなり大量のヒヨコが現れた。嬉しかったのかもしれない。それにしても、そもそもが小柄なチャボだ。そのおなかの下に30匹のヒヨコが夜になったら潜り込む。想像してみて。彼女にとってどれだけ大変なことであったか・・・。でも愚痴をこぼすどころか喜びの表情さえ見せ、この下の写真のように、人間でいうなら小学校に上がるくらいの大きさまで面倒を見続けてくれたのだった。

 そばに寄って来たチャボの姿で僕が思い出したのは、3日前のNHKクローズアップ現代。テーマは「終わりの見えない不妊治療/卵子提供、決断までの葛藤」だった。民間のクリニックの斡旋で、不妊で悩む妻が見知らぬドナーから卵子の提供を受ける。夫の精子で受精させ、彼女の胎内に戻す。昨年は300ほどの事例があったという。夫の精子が機能せず、第三者の精子を得て妻の卵子を受精させるという話は以前から聞いていたが、その逆を耳にするのは僕は初めてだった。そこには様々な問題があるらしい。ドナーの側も、受け取る側も、相手について知ることは出来ない。そして将来、生まれた子が自分の出自を知りたいと言ったらどうするのか・・・。番組を見ながら僕はふと考えたのだった。人間世界には法律があり、誰と誰の間に生まれた子であるかということを明確にする。それゆえに将来への懸念がある。しかし、ニワトリの世界にはそれがない。出自は全く問題としない・・・。わかりやすい例で説明しよう。

 チャボたちが好んで卵を産むのは、奥まったところ、ふかふかの敷物然とした物が存在する場所だ。かつ、他の鳥が産んだ卵を見たら、ああ、ここよさそうだわと、別な鳥も真似してそこに産み始める。僕の経験では、最も多いのは6羽同居。さてここから先は経験がものを言う。最初に卵を産み始めたチャボ(Aと仮定する)が抱卵状態に入る。僕は彼女のために2個だけ残してあとは取って商品とする。遅れて産み始めたチャボ(B、C、D)は抱卵状態にあるチャボAの腹の下に自分の卵を産んで、すぐ庭に出ていく。6羽同居の場合だと抱卵のチャボAのそばに次々と新たな卵が転がることとなる。そして厄介なのは、時間差でもってチャボB、C、Dがやがて抱卵態勢に入ることだ。遅れて抱卵態勢に入ったチャボにも卵を残しておいてやらねば不公平となる。ここなのである、経験がものを言うというのは・・・。今日、母鳥の体内から生み出されたばかりの卵は殻の表面がザラザラしている。そのザラザラが母鳥の体温で1日ごとに薄くなり、10日以降は表面がツルツルとなり、光った感じになる。その、ザラザラなのか、ツルツルなのかを、「わたしの卵を取らないでよ」と、こちらの手をくちばしで鋭くつついてくるチャボの腹の下に僕は手を入れて、瞬時に判断するわけだ。麻雀をやる人なら指先だけで判断する「盲パイ」という言葉を知っていよう。僕は日々、卵の盲パイをやっている。

 さて、話が少しそれてしまったが、出自云々、誰と誰の子であるかにこだわる、それは人間だけではないだろうか、もしかしたら・・・クローズアップ現代を見ながら僕が思ったのはそのことである。おそらく相続とか親権とかとの関りがあるということも理由であろうが、先ほど書いた2つの例からもわかるように、ニワトリに関してはそれがない。誰の卵であったかには無頓着で、いま自分の腹の下にある卵を暖め、ヒヨコにする、生まれてきたら育児に専念する。それだけに情熱を傾ける。この性質を利用し、僕は以前、合鴨やアヒルをチャボに育てさせたことがある。

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この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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