掲載:2021年8月号
多島美の瀬戸内海を望み、良質な魚介類の宝庫としても名高い山口県南東部の柳井市(やないし)。海のそばでの暮らしに憧れていた夫妻は、エーゲ海を思わせる景観に一目ぼれ。築150年の古民家を好みの空間にアレンジし、潮風が香る高台での日常を満喫中だ。
エーゲ海のような景観が、優雅な時間を演出
柳井市南部の室津(むろつ)半島の東海岸から、少し内陸へ入った標高約100mの高台。きらめく海の向こうに周防(すおう)大島など大小の島々を見渡す。その風景に出合った瞬間、岩崎さん夫妻は「ここだ!」と思った。
「エーゲ海を思わせるような風景に一目ぼれしたんです」
そう振り返る喜美弥(きみや)さん(58歳)は、自然豊かな場所での生活に憧れ、子どもの独立に伴って東京からの移住を決意。夫の一徳(いっとく)さん(58歳)も、個人で貿易コンサルタントの仕事をしているため、東京に住み続ける理由はなかったという。
温暖な場所で海に近いことを条件に日本各地を探し回るなか、たまたま柳井市の空き家バンクで目に留まったのが今の物件。古民家の趣も気に入り、2019年9月に移住した。
建物は状態よく保たれていたため、壁に漆喰を塗り、客間の畳をフローリングに張り替えるなど、内装を自分たち好みに改修した。
約350坪の敷地は、地中の雑草の根や石を取り除いて洋風庭園に整え、斜面の一部は約100坪の菜園に。季節の野菜や花はもちろん、レモンやブルーベリーなどとともにオリーブも植えて華やかに彩った。
まだまだやることが多く、海で遊ぶ時間はほとんどないという夫妻の一番の楽しみは、眼下に広がる海を眺めること。
「天気や時間で絶えず表情が変わり、見ていて飽きません。夜のムーンロードもすてきです」と、喜美弥さん。
多くの人にもぜいたくな時間を過ごしてほしいと考え、民泊の開業も計画中。すでに宿名は「マダムサライ」と決め、この場所の魅力を伝える同名タイトルのユーチューブでの情報発信を始めている。
岩崎さんの海の楽しみ
海を借景にバーベキュー
「いろんな方が遊びに来てくださるので、庭でバーベキューをよくしています」と喜美弥さん。洋風東屋の下は、夏の暑い日でも海風が心地よく、刻一刻と変化する海の眺めが食事をいっそうおいしくしてくれる。
「ここで自家製のハーブティーやスギナ茶を飲む時間も好き。身も心もリフレッシュできるんです」。
【岩崎さんの移住データ】
●改修にかかった費用(概算)
建物改修費…約600万円
外構整備費、工具・機械費…約250万円
合計 約850万円
●地域でかかる費用
自治会費…年2500円
神社費…年2000円弱
●参加している地域の行事
神社の管理など。
文/笹木博幸 写真/福角智江
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