掲載:2021年10月号
岩手県の八幡平(はちまんたい)で無農薬有機栽培による自給自足を実践している「農園木星」の沢田美和さん。美和さんは、体調不良をきっかけに食の安全や農業に目覚め、夫の隆治さんと出会い、この地に嫁いできた。
野菜はすべて無農薬栽培。離乳食も自宅の食材で!
沢田さん夫妻が運営する「農園木星」は、リゾート地として有名な安比高原から車で5分ほどの農村地帯にあった。標高は約400m。平地が広がるところで、高原の趣が強い地域だ。販売しているのは夫の隆治さん(39歳)が手がける蜂蜜とグリーンアスパラくらいだが、自給レベルはかなり高い。一般的な野菜はもちろん、大豆、米、イナキビなどの雑穀、ルッコラなどのハーブなどなど、数え切れないほどの食材を無農薬有機栽培でつくっている。
「薬を使ったものは子どもに食べさせたくないので、野菜はまったく農薬を使っていません。離乳食もすべて自宅にあるものでつくれたのは、すごくうれしかったですね。普段買う食材も魚くらいです」
美和さんは午後からコミュニティセンターで働いているので、子どもを保育園に預けてから1日1時間くらいしか農作業ができない。しかし、彼女にとってはすごく癒やされる時間なのだとか。隆治さんは元調理師で今は林業の会社に勤務しているが、ものすごい働き者。会社に行く前も帰ってきてからも畑で作業しているという。
美和さんがつくる保存食も種類が豊富で、味噌、バジルソース、トマトペーストなどがある。興味深かったのは豆腐の話。
「この地域の人たちは山水を飲むんですけど、それがすごくおいしいんですよ。豆腐屋さんに私が無農薬栽培した大豆を持っていくと、一斗缶に12個入った大きな豆腐をたった2400円でつくってくれる。水がいいから豆腐もおいしい。この地域の魅力でしょうね」
兵庫県の古着屋や占い館などで働いていた美和さんは、食生活の乱れから30歳前後で体調を崩す。体質改善しようと自然食品を購入するようになるが、つくる工程から見てみたいと北軽井沢の有機農家でアルバイト。そこで八幡平から働きに来ていた隆治さんと運命的な出会いを果たす。というのも、安比高原は美和さんのお父さんがスキーで足しげく通っていた場所で、リゾートマンションの1室まで購入。彼女も父親について何度か足を運んでいたので、この地域に親しみがあったのだ。
「本当は北軽のあとに長野や北海道の有機農家も回るつもりだったんですけど、彼の実家に行ったら田畑がある。私的にはラッキーかなと(笑)。交際が深まり、10年ほど前に結婚しました。兵庫の父もまさかここに嫁ぐとは思っていなかったから、驚いたようです」と振り返る。
果樹づくりや発電などやりたいことはまだまだあるが、健康を取り戻した彼女は40代で子どもを授かり、幸せな家庭を築いている。木星の意味を聞いたら、「占いの世界では幸運を呼ぶラッキースター」なのだとか。美和さんは八幡平の「木星」で幸運を手にしたのである。
八幡平市 移住支援情報
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まちづくり推進課 ☎0195-74-2111(内線1455)
https://www.city.hachimantai.lg.jp/site/ijyu/
文/山本一典 写真/鈴木加寿彦
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