掲載:2023年11月号
サラダでおいしい“春キャベツ”
虫害が少なく無農薬で育てやすい
キャベツはアブラナ科の多年草で原産は地中海沿岸、暑さに弱く冷涼を好みます。種の蒔き時は適した品種を選んで春、夏、秋の年3回。なかでも秋蒔き越冬キャベツは虫害を受けにくく、無農薬で育てやすいです。巻きがゆるめでみずみずしくてやわらかく、サラダにぴったり。スーパーの売り場には“春キャベツ”として出回ります。また、畑に余裕があれば同時に越冬する芽キャベツやケールも育ててみてください。
1 土づくり
初めての菜園では畝を準備
夏野菜の後地でよく育つ
やせ過ぎた畝では結球せず、窒素分が多いと虫害が増えます。適地は夏野菜がよく育った畝で、そのまま定植できます。初めて菜園にする場所では畝の準備をしてください。過湿で根腐れを起こしやすいため、水はけが悪い場合は高畝にします。
2 種蒔きと育苗
①タイミングよく種を蒔き、育苗期間は25日ほど
キャベツはポットに種を蒔き、苗を育てて畑に植え付けます。越冬キャベツは育苗中に間引いて1本立ちにし、本葉5~6枚で定植、本葉8~10枚で越冬させるよう、時期を選んで種蒔きしてください。早蒔きして越冬時に本葉12枚を超えてしまうと、とう立ちしてしまいます。蒔き遅れて年内の生育が本葉7枚以下だと、うまく越冬できません。種蒔きから定植までの育苗期間は25日ほどです。
ポットに詰める土は市販の培養土でよいが、培養土・畑の土・もみ殻燻炭を8:1:1の比率で混ぜると、がっちりした根の苗になる。ポットに詰める前に水を加えてよく混ぜておく。水分量は50~60%、土を握るとかたまり、突くと崩れるほどが目安
ポットの大きさは2.5号(直径7.5cm)~3号(直径9cm)。培養土をしっかり詰め、2カ所に蒔き穴をつける
1つの蒔き穴に2粒ずつ、1ポットに計4粒ずつ種を蒔く
種の直径の2倍ほどの厚さに覆土し、しっかりと鎮圧して発芽を促す
たっぷり水やりした後、乾燥防止に新聞紙で覆い、さらに水をかけて新聞紙を濡らす。新聞紙は翌々日の朝に忘れずに外す。その間は水やりしない
②本葉が出たら2本立ち
本葉3~4枚で1本に間引く
本葉が出たら、よく育った2本を残して最初の間引きをします。さらに本葉3~4枚で1本に間引いてください。タイミングのよい間引きで、双葉が残ってしっかりとした苗を育てましょう。
よく育った2本を残し、ハサミを使って間引く
双葉の間から本葉が出たら間引きを
本葉3~4枚で間引いて1本に
3 定植
①本葉5~6枚で定植
越冬キャベツは本葉5~6枚で定植し、本葉8~10枚で越冬させるのがコツです。双葉が残った元気な苗を植え付けましょう。
タライなどに3cmほどストチュウ水※1を張り、植え付け前に2時間ほど、ポットの底を浸けて底面吸水させる
※1ストチュウ水…雨水に似た野菜の栄養ドリンク。酢・木酢液・焼酎を1:1:1で混ぜたストチュウ原液をペットボトルにつくり置き、300倍以上に薄めて使う。7Lのジョウロの水には、ペットボトルキャップ(約7mL )3杯の原液を混ぜる。
植え穴より少し大きめに、草を地際から刈った後、根鉢の上面と地面が同じ高さになるように植え穴を掘る
ポットから外した苗の根鉢を崩さずに植え付ける。土を隙間に戻したら、しっかり鎮圧して周囲の土と根鉢を密着させる
大きい下葉が展開できるよう、キャベツ同士でも、コンパニオンプランツとの混植でも、隣の株との間隔は50cmとる
②定植したら草マルチと補いを
キャベツは草マルチを好む野菜です。定植後は草マルチしてください。定植から1週間ほどはコオロギなどが寄らないよう株元を空けて、その後は株元まで敷きましょう。クモなどの益虫が草マルチの下で越冬できるので、春先の虫害も減ります。
草マルチをしたら米ぬかと油かすを1:1で混ぜて一握り補う
4 お世話
①ウメが咲いたら草マルチ&補いを
冬のあいだ畝を覆うハコベやオオイヌノフグリなどの冬草は、キャベツの生育を妨げず、生きた草マルチになるため、株元以外は刈る必要はありません。春先、ウメの花が咲くころ、草が伸びはじめたら、キャベツの背丈を超える前に刈って草マルチにします。同時に、株の周りに一握り、米ぬか+油かすを年内と同様に補ってください。補いは生育を見て必要なら数週間おきに2~3回、株の真ん中の葉が立ち上がって結球が始まるまで行います。
ハコベやオオイヌノフグリに囲まれて越冬したキャベツ
春に草が伸びたら、草を刈り、草マルチや敷わらを敷く
②春はCaストチュウ水で生育を促す
ウメの開花以降、乾燥し過ぎると生育が止まってしまいます。1週間雨がなければ水やりしましょう。Caストチュウ水※2を用いると、カルシウムの補給にもなってよく育ちます。
※2 Caストチュウ水… 酢100mLに卵1個分の殻を1日浸し、カルシウム成分を溶解させたCa酢原液をつくり置く。水やりの際は7Lのストチュウ水にペットボトルキャップ1杯のCa酢原液を加えてCaストチュウ水とする。
水やりで生育を促す。補い以上に効果的
5 収穫
結球してかたく締まったら収穫
結球後、頭を押さえて、中がかたく締まったら、球の大小にかかわらず収穫します。球の大きさは外葉の生育で決まるため、小さい球が後から大きくなることはありません。穫らないと割れや傷みが出やすいので、遅れずに収穫してください。
外葉を残し、食べる玉の部分から切り取って持ち帰る
監修/竹内孝功
たけうち・あつのり●1977年生まれ。長野県を拠点に菜園教室「自然菜園スクール」などを開催。著書に『自然菜園で育てる健康野菜ゼロから始める無農薬栽培』『完全版 自給自足の自然菜園12カ月 野菜・米・卵のある暮らしのつくり方』、最新刊・新装版『無農薬「自然菜園」で育てる人気野菜』(すべて宝島社)ほか多数。
WEBサイト「@自給自足Life」https://39zzlife.jimdofree.com/
文・写真/新田穂高 イラスト/関上絵美・晴香
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