掲載:2021年12月号
伊吹山(いぶきやま)山麓の里山風景が広がる滋賀県長浜市東部。伊東さんは築80年の古民家を自身でリノベーションして、カフェを開業。国産牛のハンバーガーや野草茶を味わえるほか、これまで集めた洋服や地元作家の雑貨の販売、イベントなども展開している。カフェ空間づくりの道のりや、今後の展望を伺った。
東京に固執しなくてもいいんじゃないか
長浜駅から北東へ車で約20分。山裾の集落に伊東大雅(たいが)さん(35歳)が営む「ピクニックカフェあかつき」がある。伊東さんは岐阜県養老町の精肉店の次男として生まれた。学校を出たあとは東京でファッションデザインの仕事に就き、大手広告代理店が手がけるCMやミュージシャンのライブで衣装を担当するなど、アイデアを形にする仕事を生業としてきた。そんな伊東さんに転機が訪れたのは、2011年、東日本大震災が起きた25歳のとき。
「当時、恵比寿で仕事をしていたのですが、激しい揺れに遭遇した直後、外に出ると人が群がっていました。自分はなんて狭い場所で仕事をしているんだろう。東京に固執しなくてもいいんじゃないかと思いました」
その後、単身オーストラリアに渡り、自然豊かな環境や、アナログで人と人がつながっていくことが好きだと実感。多様な人が集まり共有できる場、カフェをつくりたいと考えるようになった。
養老町に戻ってからは、旧実家をDIYして事務所を設立。カフェの候補地を全国各地で探したが、なかなか思うような場所には出合えなかった。
そして2016年、伊東さんは養老町に近接する長浜市で、築80年の日本家屋に巡り合う。長浜市への移住を支援する民間団体・いざない湖北定住センターが紹介してくれた空き家だった。
「家屋の状態や構造、隣に神社の参道があって自然豊かな環境にひかれました。あと、近所の方が『こんなとこまで来てくれてありがとうね』と声をかけてくださって。そんなのキュンとくるじゃないですか。決め手は地元の方の人柄ですね」
物件は比較的状態がよかったものの、畳をはがすと床が腐っているなど補修箇所がどんどん出てきたため、自身でリノベーションを進めていった。最初はインターネットで情報を集めていたが、本当にほしい情報が見つからず、近隣のホームセンターに通った。
「DIYに詳しい店員さんがいて、不明点を尋ねると親切に材料や方法を教えてくださる。週8回は通い詰めましたね。あと、自治会の草刈りで知り合った近隣住民の方や、友人にもいろいろと教えていただきました」
18年5月に開業した店舗は、L字型の構造を生かし、入り口側にゆったりとしたカフェスペース、奥には物販スペースを設けた。メニューは実家の精肉店から仕入れた国産牛や、地元で穫れた新鮮野菜などを用い、時間と手間をかけたものを提供。伊吹山の野草を自身でブレンドしたお茶など、地元産に特化したメニューも考案した。
こだわりが詰まったカフェは評判を呼び、地元住民の来店も多い。趣味の音楽イベントも開催してきた。コロナ禍のためイベントは自粛中だが、落ち着いたらカフェスペースでワークショップを行ったり、近所のキャンプ場を活用した屋外イベントを手がけたりと、伊東さんには幅広い構想がある。カフェを通して、さまざまな人がつながり、楽しめるコミュニティの場を提供していきたいという。
【オーナー・伊東さんから田舎カフェ開業へのアドバイス!】
「失敗を恐れず、楽しんで!」
初めてのカフェ開業は失敗することが多いのですが、それを恐れないことが秘けつ。失敗を楽しみながら、改善策を考えるようにしています。来店客の意見にも耳を傾けて。例えば、うちのハンバーガーは当初もっと大きかったのですが、食べやすいようにサイズを改良するなど、メニューも少しずつブラッシュアップしてきました。
PICNIC CAFE あかつき
☎︎0749-74-2875
住所/滋賀県長浜市東野町252-1
営業時間/11:00~18:00(LO17:30)
定休日/Instagramを参照
Instagram/@cafe_akatsuki
長浜市移住支援情報
長浜への移住や住まいの相談に移住コンシェルジュが対応
長浜市移住定住促進協議会では、移住や住まいの相談、地域自治会とのマッチングまでワンストップで対応している。戦国・観音の聖地として豊かな歴史と文化を有するまちで、コワーキングスペースの整備や副業・兼業支援により、コロナ禍での新しいライフスタイルを送ることも可能。田舎暮らし体験住宅「さきち」もある。
ふるさと移住交流室 ☎︎0749-65-6371
https://www.nagahama-capital.
文/横澤寛子 写真/谷口 哲
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