【10羽のチャボで夫婦2人の自給を】
チャボの産卵は平均すると3日に1個ほど。毎日1個を食べるには最低3羽の計算になる。
「自給用に飼うのなら羽数には余裕を持って、できれば人数の5倍。夫婦2人でメス10羽、オス1羽が目安です。オスは鳴き声が迷惑になる場所では飼えませんが、そうでなければぜひ飼って子育てさせてみてください」
田舎暮らしの庭先飼育なら、10〜20羽ほどのチャボやウコッケイがおすすめだ。
【夜寝るためだけなら小面積の小屋でいい】
中村さんが子どものころに憧れたのは友人の農家の庭先に遊んでいたチャボ。かつて農村では自給用の鶏を昼間は庭に出し、夜は小屋で眠らせ扉を閉めて外敵を避けるのが一般的だった。これに倣って中村さんも夜寝るための鶏小屋をつくった。鶏は並んで寝るため、昼は外に出し夜入れるだけなら70〜120羽に10畳ほどで足りる。建てる場所には地面に湿気がたまらず、乾燥したところを選ぶ。屋根高は2 m以上にして、高い位置に止まり木を渡す。
「鶏は高いところが好きです」
なお、庭に放さず小屋の中だけで飼うのなら、小屋の大きさは10羽で2〜3坪ほどほしい。
鶏は外敵を避けるため寝床には高いところを好む。中村自然農園では家の軒下で寝る鳥もいる。
このスペースに夜だけなら70~120羽は寝られる。
【卵を採るにはエサをしっかりと与える】
鶏のエサは内容や鶏の体重にもよるが、乾燥重量で1羽1日100〜130 gほど必要。さらに野菜くずなどの緑餌が最低30g、理想は100 gほしい。
「初めてチャボを飼ったころ、卵を産んでくれなかったんです。近所で放し飼いしていた人に尋ねると『下痢するくらい食わさないと卵は産まない』と言われたのを覚えていますよ」
と中村さん。とはいえ庭に放して飼えば鶏は多少のエサを自分で探すうえ、微量な栄養分や消化を助ける小石なども自然に補える。鶏舎の中でエサのすべてを人が与えるよりも量は少なめ、気遣いも少ない。中村さんは約200羽の鶏に鶏用の配合飼料を1日10kg用意する。
「飼料用のトウモロコシもつくっていますが、この数になるととても間に合わないですね」
加えて近所のスーパーで魚のアラや食パンの特売があると、まとめ買いして冷凍し、小分けにして鶏に与える。
「アラはタンパク源です。食パンはし好品かな。鶏たちも同じものばかりじゃ厭きますから」
緑餌は農園の畝間を鶏が歩いてついばむほか、収穫調整後の野菜くずもふんだんにある。
「それから水は朝晩忘れずに。うちでは朝は牛乳です。以前ヤギを飼っていたころ、乳を飲ませたら鶏がさらに元気になってね。それからの習慣なんですよ」
野菜くずや雑草などの緑餌は一年中ふんだんに与えたい。「特にアブラナ科の野菜や草が大好きです」。
水は朝晩与える。ヒヨコが溺れないように浅い容器を使う。朝、水の代わりに中村さんが与える牛乳は200羽に3ℓ。
市販の配合飼料にはトウモロコシなどの主成分のほかミネラルなどの微量栄養素や消化を助ける砂まで混ぜられている。
【産卵用に狭く安全な場所を用意する】
鶏は生後半年で成鶏になり、メスは1日1つ卵を産む。産卵には周りを狭く囲まれた場所を好む。このため鶏舎には縦横30×40 cm、高さ40〜50 cmほどの産卵箱をつくるのが一般的だ。
10〜15個ほどたまると、チャボは卵を抱いて座る。ヒヨコがかえるまでは3週間。
「この間、母鶏は1日一度だけ卵を離れて大急ぎでエサとトイレを済ませます。せわしない姿から懸命さがわかりますよ」
卵を抱き始めると、孵化後の子育て期間も含めて3カ月ほど卵を生まなくなる。人が卵を取り続ければ産卵箱に卵はたまらず、産卵を続ける。しかし、しばらく続けると卵がなくても抱卵のスイッチが入って座り込む。
「この場合は鶏があきらめて立つまで待つか、ヒヨコと一緒に2日間ほかの場所に閉じ込めて子育てをスタートさせます」
母鶏は卵を抱き始めると、ふ化するまで座り続ける。卵を放すのは1日一度の食事どきだけ。
抱卵に適した場所には母鶏たちが集まる。窓のひさしの上に載せたコンテナの中は、すし詰め状態。
農園内のあちこちの産卵場所から、その日のうちに集めた卵。味は濃厚。
【鶏ふんは寝かせて肥料に】
鶏舎の床は、夜寝るだけなら土のままでかまわない。床が乾燥していれば、積もった鶏ふんは自然と発酵して堆肥になる。年に一度かき出して畑の肥料にする。
「鶏舎から出したのちにさらに屋根の下に置いて、鶏ふんだとわからないくらいまで発酵させると理想的です。50羽いれば菜園1反(300坪)の肥料が賄えるでしょう」
小屋の中だけで飼うのなら、床にはワラや落ち葉などを厚さ30 cmほど敷いたうえで鶏を入れるとよい。その後は週に一度ほど鶏ふんの目立つ部分に落ち葉などをかけてやる。乾燥し過ぎたら水を撒いて湿らせると床の温度が上がり発酵が進む。
約5反(1500坪)の中村自然農園。畑に使う肥料は約200羽の鶏たちのふんからつくる堆肥で賄われる。「充分ではないですが、少なめの肥料で野菜を育てています」。
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