茸本 朗(たけもと あきら)
1985年、岡山県生まれ。幼少期にキノコ図鑑を読み、採取活動に関心を持つ。小学5年生で釣りに夢中になり、さらに現在も愛用する出刃包丁を買ってもらったことで、野食(やしょく)に目覚める。著書に『野食のススメ-東京自給自足生活』(星海社新書)、原作を手掛けた漫画に『僕は君を太らせたい!』(作画・横山ひろと、小学館)がある。テレビ番組への情報提供・出演も多い。
YouTube 野食ハンター茸本朗(たけもとあきら)ch
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ブログ 野食ハンマープライス
https://www.outdoorfoodgathering.jp
自分が食べるものを自分の力で採る。
それだけで、めちゃくちゃ楽しいです
はじめまして、茸本朗と申します。私は身近な環境で食べられるものを採取する「野食」という活動をライフワークとしており、「野食ハンター」を名乗って各種メディアやYouTubeで活動しています。
採取・狩猟活動と聞くと、多くの方は「釣り」「山菜採り」「キノコ狩り」などの言葉を連想されるのではないでしょうか。「野食」においてもそういった活動がベースになりますが、それでもわざわざこの用語を用いるのは、ただ採取するだけではなく「採取した食材を日々の食卓に活用する」ことを大事にしているからです。
私にとって野食とは日々の暮らしそのものであり、手間と費用をかけずに身近な環境で行うことを重視しています。これにより「エンゲル係数(家計の消費支出に占める食料費の割合)を下げ家計を楽にする」「畜産や畑作がもたらす環境負荷の低減を目指す」「自然の恵みから栄養を得て健康を保つ」などといった、さまざまなメリットを得ています。まあそこまで難しいことを考えなくとも「自分が食べるものを自分の力で採る」ってだけでめちゃくちゃ楽しいです。『田舎暮らしの本』の読者さまならきっとわかってくださるはず!
今回は、野食の楽しさや採って食べてみてほしい食材、リスクを回避し楽しく活動するための注意点を、 簡単に(重要!)お伝えできればと思っています。
河川敷は、野食ハンターにとって絶好のフィールド。私は多摩川河川敷が好きで、近くに家を探した。
野食というレクリエーションは、都市部に住む人でも(むしろ都市部に住んでいるからこそ)楽しむことができます。なぜなら我が国の都市部にはだいたい河川敷が整備された大きな河川があり、また海に面した場所なども多いからです。
しかし、こういった場所で野食を行うためには守らなければいけないルールもたくさんあります。最も重要なことは「採取禁止の場所で採らない」「採取禁止のものを採らない」の2点で、これを破ると最悪逮捕されることもありえます。また、人が栽培・養殖しているわけではない自然の生き物は、極端な採取圧がかかるとすぐに数を減らしてしまいます。特に、山菜狩りを行う人にマナーの悪さが散見されます。末永く楽しむために、必要な分だけの採取にとどめたいものです。
また、これはルールとは異なりますが、野にあるものは人間に利用されるためにそこにいるわけではないため、我々に害をもたらすものも少なからずあります。しっかり同定を行わないままに口にしたために中毒になったり、また不用意に触ってケガをしてしまうこともあるので、最低限の知識と注意は必要となります。
以下に「野食ハントの7カ条」をまとめましたので、じっくりお読みください。
【野食ハントの7カ条】
①生態系をリスペクトする
その場所の環境を構築する生き物に配慮し、採り過ぎや無駄・無闇な殺生は避けましょう。
②採取可能な場所で採取する
基本は河川敷か海岸がおすすめ。公園や山、空き地などは所有者の許可が必要になることが多いです。
③採取可能なものを採取する
保護されている種や、漁業権が指定されているものを採取・利用することはできません。また、外来種のなかには生体の輸送が禁止されているものがあり注意が必要です。
④同定はしっかり行う
食用種と似た有毒種は多数存在し、また野生生物は個体によって外見が大きく変わるため、見た目だけでの判断は厳禁です。慣れるまでは図鑑(安価なポケット図鑑でもOK)をチェックし、特徴を1つずつ照らし合わせて確認するようにしましょう。
我が家の近くの駐車場に自生しているニラ。ニラは毒成分満載のスイセンと間違えて中毒になる人が後を絶たない。ニラの特徴的なにおいが同定のポイント。もちろん少しでも自信がなければ敬遠するのが鉄則だ。
⑤アレルギーに気をつける
甲殻類アレルギーの人は昆虫食にリスクがあるなど、野食には意外な危険もあります。自分の体質は常に意識しておきましょう。
⑥もしものときを考える
中毒やアレルギー発症のリスクを考え、初めて食べる食材は少量にとどめて様子を見るのが無難です。また有毒生物に似ている食材は、同定力がつくまでは採取を控えましょう。
⑦自然をナメない
雨の後の河川の増水、海岸の波や潮流など、自然界には予想外の危険がたくさん存在します。天候や自分の体調をしっかり確認してから野食を行うようにしましょう。
文/茸本朗 写真/鈴木千佳
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