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田舎暮らしの本 12月号

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田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

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「良い」孤独、「悪い」孤独/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(25)【千葉県八街市】

 7月10日。今朝はランニングでなく、自転車を走らせた。参議院選挙の投票で集会所に行くためだ。我が街はときどき、県内投票率のワースト記録に顔を出す。僕は投票に行かないと気分が良くない。歯磨きをサボったとか、トイレから出て手を洗わないとかに似た気分。だから行く(後で知ったことだが、全国の投票率は50%ちょっとだったという。日本を「悪い国」にしているのはこの低い投票率、選挙民のサボりではないかと、僕はふと勝手に思う)。

 さてさて今日もすさまじい光が降り注ぐ。野菜は必死にその日差しに耐え、一部の果樹には枝枯れが生じている。しかし雑草だけはたくましい。半月くらい前だったか、50年後、とんでもない旱魃が全世界を襲うとの専門家による予測がなされた。僕は思った。野菜がダメになり、果樹がダメになり、でも最後まで生き残るのがこの雑草たち。その雑草たちさえもが枯れる、その時がたぶん地球の危機であろうなと。この上の写真、ソーラーパネルを遮る草を、僕はすでに6月以来三度始末した。それでもなお、今日見ればごらんの通りだ。ソーラーパネルついでに書くと、一昨日に来た東電の請求額は580円だった。少雨、高温・晴天という気象は野菜や人間を苦しめているが、太陽光発電に関しては大いに貢献していることになる。

 今日も大豆の定植に精を出す。当初、種は600ほどポットにまいた。その発芽率は80%ほどだった。発芽しなかったぶんを補うため、倉庫にストックしてあるガリガリにかわいた株を取り出し豆を用意し、ポットにまいた。その豆がまだだいぶ余っているなあ。せっかくだ、まいておこう。ということで、最終的にポットの苗は700を超える数となった。順次植えていく。しかし場所が足りない。深いヤブとなっている所を開墾する。泥棒を捕まえてから縄を編む、まさしく我が人生の根幹は泥縄式なのである。それでも気分がいい。物事を良い方にとらえるのだ。かように。大豆仕事がなかったら、このヤブはヤブのままだったはず。それがこうして爽やかな姿に変じたではないか・・・。

 草丈は50センチ。長く鍬入れなどせず放任だったこと、雨が降らないので土が固くなっていること。そうした事情でスコップは素直に入っていかない。両腕と腹筋に力を込め、さらに上半身を回転させることでパワーを増幅させ、バリバリと草をなぎ倒す。草がなくなったら立ち上がり、スコップを足で踏み込み、畝を作っていく。今日はこの作業、荷造り発送をはさんで午前と午後、のべで6時間やった。我が人生の支え、原動力、その90%は知恵でも外部からの情報でもなく、筋肉なのである。

 腸内細胞は脳の働きや免疫力とも関わっている。それと肩を並べて我らの暮らしに貢献するのが筋肉である。筋肉には貯熱性がある。筋肉を増やせば寒さに強くなる。さらに貯水性もある。熱中症になりにくい・・・そして、僕の暮らしでは日々の労働の力ともなっている。筋肉を使う→貯熱性と貯水性が高まる→暑くとも寒くとも変わらず働ける→それでもって働くことでさらに筋肉を発達させることが出来る・・・この循環が完成したところに、僕の言う「良い」孤独の太い軸が作られる。いつでも自分の思い通りに動いてくれる筋肉があるという安心感が自立と自律につながる。外界と隔絶してもやっていけるという自信に結びつく。むやみに外界の出来事を胸の内に引っ張り込み、わが身に照らし合わせ、羨ましがったり、腹立たしく思ったり、哀しく暗い気分になったりするネガティブな精神、それを遠ざけることが可能になる。唐突な意見と感じる人もいるかもしれないが、筋肉を強くすることが「悪い」孤独を追い払う手段であると僕は考えるのだ。試してみるのも無駄ではない。

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