形状が振り子時計に似ていることに由来する時計型薪ストーブ。欧米の高級薪ストーブとはまったく異なる構造とコンセプトで、昔から愛されているロングセラーだ。ホームセンターで6000円程度で買えるモデルもあり、屋内使用はもちろん、持ち運びが簡単で、庭先、キャンプ、防災用途でも活躍するため、近年、大注目されている。そんな超実用的な時計型薪ストーブの魅力と実力を、メーカーのホンマ製作所に直撃取材した。
ガンガン使う日用品
傷んだら買い替える!
薪ストーブのなかでも手軽に利用できるのが、時計型ストーブと呼ばれる鋼板製のもの。ホンマ製作所の丸山さんによると、その手軽さには3つのポイントがあるという。
「まずは価格面。当社では税込み6,280円で買えるモデルもあります。そして、ホームセンターなど身近なところで購入し、自分で設置できるのもポイントです。3つめは鋳鉄製の薪ストーブに比べてはるかに軽量で、持ち運びが簡単というところ」
↑ ホンマ製作所のベストセラー、時計型薪ストーブ。【時計2型薪ストーブ AF-52】6,280円(税込)
W350×D520×H345㎜/煙突径:φ106mm/材質:鉄/重量:4.6kg/暖房面積:10~15坪
時計型ストーブは室内だけでなく、キャンプなどのアウトドアの場面へ持ち出して使用できる。さらに東日本大震災以降は、災害の現場でも大活躍。ライフラインが途絶えたときの食と暖のサポートグッズとしての認識が広がり、ホームセンターなどでは防災用品売り場で販売されているケースもある。
「重量があり、耐久性の高い鋳鉄製の薪ストーブに比べれば、寿命は長くありません。室内で毎日使用する場合は2シーズン、キャンプ専用なら10シーズンくらいが限度でしょうか。日用品ですからどんどん使用して、傷んだら買い替えていただければと思います」
室内では作業場や小屋などの土間や、囲炉裏の跡などに置いて、暖をとりながらお湯を沸かすといったシチュエーションで使われることが多い。下が不燃の場所であれば、あとは煙突を確保するだけという点も、時計型ストーブの魅力だ。
室内だけでなくアウトドアでも使える!
時計型ストーブの魅力の1つが、持ち運びや組み立てが簡単なこと。ホンマ製作所のストーブコンロセットは専用の収納バッグが付いており、大人の男性ならラクに持てる重さ(7.9kg)だ。一般的なバーベキューセットなどと、それほど変わらない。一般的な車のラゲージにも充分入る大きさでコンパクトにまとまるのも特徴だ。普段は室内で、休日はキャンプでと、多様な場面で使用することができる。
↑ アウトドア仕様時計型薪ストーブ。組み立ても簡単で巾着式収納バッグも付いている。【ストーブコンロセット APS-52BG】19,600円(税込)
本体サイズ:W390xD520xH493(煙突含:D740xH1388)㎜/煙突径:φ106㎜/材質:鉄/重量:7.9kg/暖房面積:10~15坪
火加減も自由自在!
↑ 扉の下にある空気調整用の小さな窓。ここの開閉によって火加減を調整する。
煙突の径は106mm
↑ 一般的な薪ストーブ用の煙突より細い106㎜の煙突を使用。世界標準ではないが、国内では一般的なサイズで入手が容易だ。
調理スペースは2口
↑ 時計型の形状であるため、家庭用のコンロ風に言えば「2口」の調理スペースがある。小型のスキレットややかんなどを使うのにピッタリ。
多様な大きさの調理器具に対応
↑ メインの調理スペースは、天板組蓋を外すことで119~333㎜まで5サイズ(ストーブコンロセットは280㎜までの4サイズ)の調理器具を固定できる。もちろん、直火を避けるためにすべて閉じた上に置くことも可能だ。
中が見えるガラス窓に変更可能
↑ 窓のみを交換することが可能。閉めた状態でも炎の様子が見えるガラス窓が、オプションとして用意されている。
アウトドア用は長い脚
↑ アウトドアで使いやすくするとともに、熱でキャンプ場の芝生などにダメージを与えないように、長い脚を使用している。
燃えやすく冷めやすい
忙しい朝方には好都合
鋳物製に比べて長時間暖める能力では劣るものの、薪が短時間で燃えやすく、火を消してからストーブが冷めやすいのは、冬場の忙しい朝方などにはむしろ好都合。こういったところも、時計型ストーブの利点だ。
「注意していただきたいのは煙突の設置の仕方です。ストーブ自体が安価なので、煙突も安くすませるために、ホームセンターなどで売っているものでDIYする方が多いと思います。その際には遮熱と通気にはくれぐれも気をつけてください」
煙突と建物の壁が交差する点には「メガネ石」などの断熱材が必須。また屋根より上に煙が上がるように、軒先より1m以上高い位置に、煙突のトップ部分を設置する必要がある。
「近年では、テントの中に時計型ストーブを持ち込んで使用する方もいらっしゃいます。ストーブ本体や煙突に、幕が触れないようにするのはもちろんですが、時計型ストーブは気密性が低いため、通気にも気をつけてください。テント内でも通気口を確保しておかないと、就寝中に一酸化炭素中毒になるケースがあるのです」
↑ キャンプやバーベキューでよく使用する炭に比べ、薪は簡単に火がつけられるのも魅力の1つだ。
↑ 基本的にしっかり乾燥した薪であれば、木の材質は問わない。
見た目の違う3種類のタイプ
それぞれのメリットは?
時計型ストーブにはマットなシルバーの鉄製、光沢があり反射しやすいステンレス製、黒耐熱塗装のステンレス製の3種類があり、それぞれに長所がある。
↑ (右上)【時計1型薪ストーブ AF-60】6,340円(税込)、(左上)【ステンレス 時計1型薪ストーブ AS-60】11,640円(税込)、(下)【黒耐熱 窓付時計型薪ストーブ ASW-60B】21,700円(税込)
「鉄製は価格が安くて、暖かさが伝わりやすい、ステンレス製はさびにくいという長所があります。黒塗装は耐熱性が高いのはもちろんですが、遠赤外線の放出量も多め。どちらかといえば鉄製が室内向け、ステンレス製がアウトドア向けですが、それほど差はありませんので、見た目で選んでいただいてもいいと思います」
最近注目度が高まっている時計型ストーブ。非常に手軽なので、生活の一部に加えてみてはどうだろうか。
株式会社ホンマ製作所
新潟市に本社のある、薪ストーブや煙突、野外調理道具の専門メーカー。一般的な鋳物の薪ストーブのほか、時計型ストーブなど鋼板製の製品も販売している。本社には、ショールームを設置。薪ストーブなどほぼすべての商品が展示されている。事前に電話で予約すれば見学可能だ。
公式HP:https://www.honma-seisakusyo.co.jp/
オンラインショップ:https://www.honma-seisakusyo.jp/
【ショールーム】
新潟県新潟市南区北田中801番地8
☎025-362-1235
文/渡瀬基樹 写真/伊平裕哉(スタジオ嶋田)
※田舎暮らしの本 2018年11月号より転載、加筆しています。
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする