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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

余白があるから仕事にできる。伊自良大実柿の魅力を発信!【岐阜県山県市】

自然豊かな山県市を代表する特産品に「伊自良大実柿(いじらおおみがき)」という、渋が非常に強い柿がある。かつては柿渋染めの原料として欠かせなかったが、化学染料の登場とともに柿渋は一時製造が途絶えた。そんな柿渋を地域住民らが復活させ、その魅力を発信している加藤さんの工房を訪ねた。

掲載:2023年6月号

岐阜県山県市 やまがたし
県都・岐阜市の北側に隣接する山県市。山地、丘陵地が多く、長良川支流の武儀川(むぎがわ)、鳥羽川、伊自良川沿いの平坦地にまちが広がる。岐阜駅から約9~34km圏内に位置し、東海環状自動車道山県ICより「柿BUSHI」や伊自良湖(写真)がある伊自良地域へは車で約15分。

 

システムエンジニアを辞め地域おこし協力隊に

柿BUSHI 加藤 慶さん
愛知県尾張旭市に生まれ、2005年より大学・大学院・会社員時代は東京都で過ごす。大手金融企業系列会社のシステムエンジニアとして従事したのち2016年、山県市地域おこし協力隊に。伊自良大実柿に関する地域おこしに携わる。2019年より個人事業主として「柿BUSHI 」を開業。
加藤さんが染色作業を行 う「柿BUSHI 」の工房にて。 地域住人から借りている物 件で、目の前には山県市 の特産品・ニンニクの畑が 広がり、春は土手のサクラ 並木が目を楽しませてくれる。

 里山風景が広がる山県市伊自良地域。秋の風物詩として知られるのが、伊自良大実柿の「連柿(れんがき)」。伝統的な干し柿のことで、藁(わら)に吊るした柿がまるでオレンジ色のカーテンのように軒先を彩る。そんな伊自良大実柿の魅力を発信する「柿BUSHI」を営むのが加藤慶さん(37歳)。

 前職は東京都内の大手金融機関のシステムエンジニアだったが、「サラリーマンは好きなことだけを仕事にできるわけではない。いつしか何かを形にする職業にひかれるようになりました」。

 そんなとき、地域おこし協力隊や山県市の存在を知る。

 「山県市の自然の豊かさにひかれ、伊自良大実柿の存在や、柿渋染めの技術にも興味を持ちました。しかし柿渋は製造が途絶えていて、地元でも存在を知らない人が。ネット検索をしてもほとんど情報がない。でも、〝余白〞がある状態だからこそ、自分の仕事になるのではと、地域おこし協力隊に応募したのです」

 仕事は主に伊自良大実柿の普及活動。地域と積極的にかかわることで、山県市や伊自良大実柿にさらにひかれていった。

柿渋染めの手ぬぐいやふきん、柿渋の原液をボトル入りで販売している。木製品の塗装、他企業で糸に染色されるなど用途は広がりを見せている。

地域でつくられた連柿を活用した商品も開発。伊自良大実柿のクリームチーズ入り(1個590円)は冷凍保存したものを通年販売(売り切れ次第終了)。

「柿BUSHI」工房の棚には、柿渋染め枕カバー(2800円)といった商品や伊自良大実柿、柿渋の説明パネルを展示している。

 

技術や商品の開発は得意だが営業は苦手

 個人事業主となることを決意。柿渋染め、干し柿販売、山県市の観光に関することを生業とすることとなった。特筆すべき仕事は、柿渋の原材料づくり。

 「伊自良大実連合会に入れていただき、みなさんと放棄畑の草刈りや柿の収穫を行っています。収穫期は年に2度あり、干し柿用は11月初旬ですが、柿渋用は8月。青い柿を約5㌧収穫し、岐阜県池田町(いけだちょう)にある業者でつぶしてもらい、原液を保管しています」

 この柿渋を用いて染色するのも加藤さんの仕事。何度も繰り返し作業し、染め具合を追求していく工程は、システムエンジニアだった加藤さんの気質に合っている。最近は大手企業から染色の依頼が入り、染色代行の仕事も増加。また、柿渋は防腐効果があることから、木製品の塗装にまで広がりを見せている。地域の特産を活用し、半世紀途絶えていた技術を復活させる活動に共感する人が増えているのだ。しかし、「これは自分だけの力ではない」と加藤さんは言う。

 「自分は染色の技術や商品の開発などを考えることは好きなのですが、営業は苦手。ビジネスパートナーや地域の方に協力いただいていることが大きいです。お世話になっている地域のために、今後も伊自良大実柿の魅力を発信していきたいです」

柿渋染め体験も予約制で受け付ける。用意されたストールや手ぬぐいを染めるほか、自分の洋服やバッグなども染められる。

青い渋柿をつぶして出た汁を発酵させた液体が柿渋。これを水で割ったもの、次に媒染剤と段階的に布を浸して染色する。

柿BUSHI
住所/岐阜県山県市平井51-5 ☎090-4663-5467(加藤)
営業時間・定休日/ 不定(電話または公式ホームページより問い合わせ)
https://kaki-zanmai.com

 

田舎でお店を開くためのアドバイス

「地域の特産を活用し、ストーリーのあるものづくりをしています」

ほかの誰もやっていない“余白”を見つけて、それを形にすること。地域性やオリジナル性も追求し、自分の立ち位置をつくるよう意識しています。ただ、ひとりよがりにならないよう、自分のことを客観的に見ることも必要だと思います。

利用した開業支援&補助金▶「山県市中小企業等活性化補助金」を活用しました。補助対象事業がいくつかありますが、地域課題解決に効果のある事業に、3分の2(上限80万円)の補助金が出る「創業型事業」を選択しました。

 

【山県市】移住支援情報
子育てしやすいまちづくりを目指し、多彩な支援で子育て世帯を応援

第2子以降を出産した市内在住者には、第2子10万円、第3子20万円、第4子40万円、第5子80万円、第6子160万円、第7子以上320万円の赤ちゃんほほえみ応援金を支給。乳児の保護者に対しベビー用品の購入に要する費用としてベビー用品応援金4万円を支給。0〜2歳児保育料の無償化など、さまざまな子育て支援を行っている。

問い合わせ/子育て支援課 ☎0581-22-6839
https://www.city.yamagata.gifu.jp/site/yamanavi/

伊自良地区で100年近く受け継がれている伝統の干し柿「連柿」。

市北部を流れる円原川は、岩間から湧き出る伏流水が水源。夏の朝は川霧や光芒が発生することも。

 

文/横澤寛子 写真/田中貴久 写真提供/山菅敦史

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