掲載:2021年8月号
南九州の山々からの水資源と、昼夜の寒暖差が激しい気候が特徴の伊佐市。焼酎のふるさとで、県内屈指の米どころとしても名高い。自給自足を目指す柳瀬さん夫妻にとって、まさに理想的な環境だった。
山に囲まれた環境が、人にも作物にも好影響
「夜は星がきれいで、朝は鳥の声で目が覚めるんです」
そう話す柳瀬竜也(やなせたつや)さん(33歳)・悦子(えつこ)さん(42歳)夫妻が暮らす家は、隣家とは200m以上離れた小高い所に立地。すぐ近くに名瀑「曽木(そぎ)の滝」があり、山間の大自然の魅力を身近で感じられるという。
ここ伊佐市へ東京から移住した理由は、竜也さんの曽祖父がかつて伊佐市にいたことがわかり、縁を感じたから。その後、古民家を借りて2018年から約3年住んだのち、現在の物件を購入して今春入居した。
価格は約70万円と安かった半面、全体的に傷みが激しく、市の改修費補助金75万円を活用して改修した。
宅地に付属していた約290坪の農地は、モモやナシ、プルーンなどを植え、生育具合を見ながら果樹園として広げていく計画だ。転居前から借りている約450坪の田んぼと約150坪の畑では、無農薬・無化学肥料で米や野菜を栽培している。
「伊佐市は一日の寒暖差が激しく、おいしい作物が育つ理想的な環境なんです」
そう話す竜也さんは有機農業の農園、悦子さんは福祉施設でそれぞれ働いて収入を得ながら、自分たちの田畑を管理。
「まずは今ある農地をフルに活用して、自給率をどんどん上げていくことが目標です」 と、竜也さん。
敷地内には鶏小屋と豚小屋が残され、その気 になれば渓流釣りを教えてくれる人も近くにいる。食の自給の伸びしろはまだまだ大きい。
【柳瀬さんの移住データ】改修にかかった費用(概算)
約400万円
床・天井の張り替え、キッチン交換など。
●地域でかかる費用
自治会費…年5000円
●参加している地域の行事
総会のほかは特になし。
【柳瀬さんの山の楽しみ】天空の牧場で黒豚を味わう
「本当に天空という感じの牧場の風景が眺められます」と悦子さんが話すのは、沖田黒豚牧場が営む牧場民宿レストラン「和-のどか-」。餌にこだわって放牧で育てた黒豚の肉は「身が引き締まっていて、うま味がしっかり」と、特に竜也さんのお気に入りだ。
【伊佐市の山グルメ】沖田黒豚と金山ねぎの冷しゃぶうどん
材料(1人分)
沖田黒豚…150g
金山ねぎ…100g(小口に刻んで水にさらす)
小ネギ…飾り程度
うどん乾麺…70g(または冷凍麺180g)
だし…めんつゆ100ccに練りゴマ20gをといて酢30ccを加える
つくり方
❶ 鍋に湯を沸かし、豚肉をしゃぶしゃぶして氷水で冷やす。
❷ ①の鍋でうどんをゆで、流水でぬめりをよく洗い、氷水で冷やす。
❸ 器にうどんを盛り、豚肉をのせて金山ねぎと小ネギを飾り、だしをかける。
【伊佐市の山の幸の取り寄せ】
牧場民宿レストラン「和-のどか-」
☎︎0995-28-2098 https://www.okita-pork.com
【担当者に聞く!】伊佐市オススメスポット&グルメ
伊佐市の豊かな水資源を象徴するのが、明治時代に建設され、水力発電所として国内最大級の出力を誇った曽木発電所。今はダム湖で見え隠れする遺構が往時をしのばせる。
また「伊佐米を筆頭に食材が充実」と、企画政策課の河野英二さん。“天空の放牧場”沖田黒豚牧場、米育ちの牛が自慢の伊佐牧場はその代表だ。
【伊佐市移住支援情報】快適な平屋で移住体験を
お試し移住ができる「移住体験住宅」として、菱刈川北地区と菱刈重留地区に各2棟を用意。2DKまたは1LDKの平屋で、3泊9000円から最長27泊4万円まで。主な家具・家電は備えているが、布団や衛生用品などは別途用意が必要。滞在中は希望に応じて、空き家見学や先輩移住者訪問などのサポートを行う。
お問い合わせ:企画政策課 ☎︎0995-23-1311 https://www.city.isa.kagoshima.jp/teiju
文/笹木博幸 写真/樋渡新一
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