田舎暮らしの本 Web

  • 田舎暮らしの本 公式Facebookはこちら
  • 田舎暮らしの本 メールマガジン 登録はこちらから
  • 田舎暮らしの本 公式Instagramはこちら
  • 田舎暮らしの本 公式X(Twitter)はこちら

田舎暮らしの本 1月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

清流沿いの空き家物件で、農業と釣りを楽しむ悠々自適のセカンドライフ!【山口県阿武町】

掲載:2022年10月号

北長門海岸国定公園に含まれる海岸線を有し、阿武火山群の活動で形成されたまち全域が萩ジオパークに指定されている阿武町。コンビニがなくても日本海と里山の恵みがあふれる環境は、早期退職後のスローライフを夢見ていた夫妻にとってまさに理想郷だった。

本間さん夫妻は、菜園での野菜づくりと趣味の釣りで自給自足的な生活を満喫中。

山口県北部の阿武町は人口約3000人のまち。漁業や農業が盛んで、 希少な無角和牛、スイカ、ナシ、キウイが特産。道の駅「阿武町」は道の駅発祥の地とされる。萩・石見空港から町内中心部へ車で約50分、山陽新幹線新山口駅から車で1時間余り。

適度な自給自足を楽しむ、優雅なセカンドライフ

 穏やかな漁村の雰囲気が漂う阿武町北東部の宇郷(うたごう)エリア。空き家バンクで見つけた清流沿いの家で暮らしているのは、2019年に宮城県仙台市(せんだいし)から移住した本男(ほんまたかお)さん(65歳)・久子(くみこ)さん(53歳)夫妻。

「60歳で早期退職し、夫婦で旅をしながら『雪の心配のない移住先があれば』と探していました。阿武町は海、川、里山があり、自然災害がとても少ないことにひかれたんです」

 と、孝男さん。100万円で購入した家は、約50坪の菜園スペース付き。改修にはまちの補助金を活用したが、問題は約10年放置されていた敷地だった。

「妻と少しずつ手入れし、半年ほどでようやく野菜が植えられるようになりました」

 とはいえ、1年目は失敗も多かったと孝男さんは話す。

「雨ざらしのトマトは実がほとんど割れてしまい、雨よけのハウスを設置。スイカは付いた実をすべて育てたら、小さくて味気ない仕上がりに。順調に育ったトウモロコシが、支柱を立てていなかったばかりに台風で倒されて全滅したことも」

 試行錯誤しながら3年目を迎え、要領がつかめてきた夫妻。この地域は霜が降りず、栽培時期を多少間違っても枯らしてしまうことがなく、年間通じていろんな野菜が育てられるのが魅力だという。マイペースで菜園生活を満喫する傍ら、孝男さんは日本海へ釣りに出かける。

「タイ、キジハタ、ヒラマサ、ブリなど、魚種は豊富です」

 その趣味から派生して「まちの特産品をつくろう」と、釣果を地元「阿武の鶴酒造」の酒粕漬けにして近所に配ったところ好評を得て、昨年10月に創業。現在は近海の魚を仕入れて加工し、道の駅などで売っている。

「野菜づくりや釣りをしながら、自分たちでつくったものを売り、地域への貢献と同時に生きがいにもなっています」

 と、孝男さん。今後は、地元の人たちが気軽に集える飲食店を開くことも夢見ている。

約50坪の菜園。2人で維持するには少し広いが、土を休ませながら季節の野菜の栽培が可能。

作業は無理のない範囲にとどめ、1日1時間30分ほど。収穫のついでに草取りなどを行う。

「ジョウロでの水やりが大変だったので」と散水用スプリンクラーを 設置。1mほどの高さにして菜園全体に水が行き渡るようにした。

霜がほとんど降りない温暖な気候に恵まれ、年間通して20種類以上の野菜を育てている。

穫れたて野菜を使って料理上手な久美子さんが腕を振るう。この日はゴーヤチャンプルー。

ご近所さんを招いて庭でバーベキュー。皆さんが野菜づくりやDIYの先生だという。

庭のテーブルとイスは大工さんにノウハウと材料を提供してもらい、孝男さんが自作。

DIYで壁や天井をパステルカラーにアレンジしたリビング。床も孝男さんが塗り替えた。

客間としてDIYで内装を改修している2階。壁は漆喰で仕上げ、幅木を入れて仕上げ中。

釣り好きの孝男さんはゴムボートで日本海へ。「タイやクエなどの高級魚もよく釣れます」。

ときには自宅の目の前の清流に網を仕掛け、テナガエビや川魚を獲っている。

鉄道ファンに人気の惣郷川(そうごうがわ)橋梁は、本間さん夫妻もお気に入りの夕景スポット。近所なのでよく訪れるそう。(写真/孝男さん)

マダイとキジハタの「あぶの粕漬け」は、道の駅「阿武町」で販売。そのほかネット通販も。https://abunosora.com/

本間さん菜園のこだわり

マルチシートともみ殻を活用

 除草剤を使わないため、雑草対策にマルチシートを活用。「今年初めて使いましたが、あとの作業がずいぶん楽になりました。併せて土の保水用にもみ殻を入れています」と孝男さん。野菜は無農薬で育て、肥料は牛ふんと初心者でも扱いやすい水平型の化成肥料を使う。また、オクラなどは種を採って翌年利用。

本間さん伺いました!

どんな野菜が育ちやすくておいしい野菜になる?

 この土地はもともと田んぼだったらしく、粘土質で水はけがあまりよくありません。だから水を切らせない野菜の栽培に向いているようで、オクラやキュウリ、ミズナ、ホウレンソウなどが立派に育ち、味もよく仕上がります。

菜園生活 QA

Q. 菜園を始めるときにかかった初期費用は?

A. 最も高かったのは8万~9万円のミニ耕運機。そのほか、鎌、鍬、スコップといった道具類、各種支柱やマルチシート、肥料を含めて10万円ほどです。

Q. 野生動物による被害はない?

A. 自然豊かな場所なので近隣にイノシシやサルは出ます。ただ、うちは住宅に囲まれ、里山とは国道や川で隔てられていることが幸いし、被害はありません。

Q. 菜園の初心者向けアドバイスは?

A. 本やネットで書かれているのは、野菜を見栄えよく上手につくる方法。自家用であれば、そこまで神経質にならなくてもおいしいものはできると思います。

 

文・写真/笹木博幸

この記事のタグ

田舎暮らしの記事をシェアする

田舎暮らしの関連記事