土蔵は日本の伝統的な建築様式の1つで、古い建物が好きな人たちの間で人気の的。高畠町で見学したのは、かつて米穀商が営まれていた2階建ての立派な土蔵。住宅付きで、利用法を考えるのが楽しみな物件だ。
掲載:2022年10月号
2022年8月上旬の情報です。
すでに契約済みの場合があります。
山形県高畠町(たかはたまち)
山形県の南東に位置する人口約2万2000人の町。ブドウの産地、有機農業の先進地として知られる。写真は学問の神様を祀った日本三文殊の「亀岡文殊」で、物件から徒歩圏にある。東京から高畠駅まで山形新幹線で2時間20分。
夏でも涼しい土蔵の内部。カフェや工房に改造可!
「こちらが米穀商が営まれていた土蔵です」と本多さん。土台には大谷石に似た特産の高畠石も使われている。
【古民家いいね!】
土蔵の1階は10畳2間で、上段の間には書院造りの堂々とした床の間がある。その隣は神棚の下に天袋。違い棚に高級な美術品が並べられており、格式の高さが感じられる。往時の繁栄を忍ばせる立派な造りだ。
高畠町の物件を訪れた日は好天で真夏日になったが、土蔵の中に入ると涼しい空気が漂っていた。厚い土壁でつくられる土蔵は断熱性の高い建物で、天然素材は呼吸するため調湿性にも優れている。この快適さは、体験しないとわからないだろう。
「この土蔵は米を保管して商いをする米穀商が建てたものですが、1階はお客さんをもてなすよう座敷蔵に改造されています。総杉材造りの品のよい造りで、随所に見事な細工が施されており、遊び心と格式の高さを感じますね。昔は裏山でマツタケがいっぱい採れたので、それも売っていたそうです」
と全国古民家再生協会山形第一支部・支部長の本多作之助さん。
木の階段を上って2階に上がると、地元の松材で組まれた見事な部材が姿を現した。ここは倉庫蔵で、衣類を収めた長持や朱塗りしたお膳とお椀など骨董品がいっぱい。希望があれば、これも付けてもらえそうだ。
「1階の座敷蔵は木工や彫刻などの工房にしたり、週末カフェなどに改造できます。利用の用途さえ決まれば、細かなリフォーム費用の明細を出しますので、ぜひ私にご相談ください」
と本多さん。建築のプロらしい頼もしいコメントだ。
この土蔵の裏手には連続して大きな二世帯住宅が付いている。築約20年と古い建物ではなく、1階のユニットバス以外にこれといった傷みは見当たらない。
1階と2階で77坪もあるのだから、充分過ぎるくらいの居住スペースだ。土蔵でカフェを開業したり、趣味を極めながら、日常生活は裏の二世帯住宅で過ごすという利用法が妥当だろう。
なお、マツタケが採れたという裏山は購入者に無償譲渡するとのこと。手入れをすれば、山菜やキノコを収穫できる可能性も充分にありそうだ。
【物件データ】
山形県高畠町
580万円(交渉可)
土地:252坪・835㎡
延床:104坪・344㎡
座敷蔵と倉庫蔵の土蔵。築約20年の二世帯住宅付き
●蔵3部屋、住居8LDK●宅地●平坦地● ●約100年●水洗(住居部分)●山形新幹線高畠駅より車で10分■「亀岡文殊」へ向かう街道のシンボル的存在だった2階建ての土蔵。現在は1階が2間の座敷蔵、2階が立派な部材が見える倉庫蔵になっている。裏手に連続して2階建ての築約20年の二世帯住宅があり、状態は悪くない。山菜やキノコの収穫が望める裏山は無償譲渡する。
●問い合わせ:(一社)全国古民家再生協会 山形第一支部 ☎︎0238-24-9813・媒介
https://hondahomes.com/
http://kominka.net/bukken/206012/
玄関側は明かりをとるため、障子の戸で仕切られている。あちこちに見える凝った細工も魅力的だ。
つなぎの間から土蔵内部をのぞいたところ。二世帯住宅からそのまま入れるようになっている。
昔は米を出し入れしていた重厚な扉。いまでも開閉できるようになっている。
【古民家いいね!】
2階は人が立てるくらいの高さの倉庫蔵。尺2寸ほどの太い梁、5間の長い棟木に思わず目を奪われる。天井の低さはやや気になるが、収納だけのスペースにするのはもったいない。上手な利用法を考えたいものだ。
1階と2階を結ぶ階段も木材をふんだんに使っており、丈夫な造りになっている。
【補修が必要なところ】
土蔵は屋根裏に熱がこもらないよう通気層を設けた「置き屋根」になっているが、雪の重みで部材が折れている。二世帯住宅1階のユニットバスは凍結で配管が破裂。この2カ所は補修が不可欠で、計300万円程度はかかりそう。あとは使用用途で補修費が変わるので、建設会社も営んでいる本多さんに相談を。
蔵の裏手は玄関が2カ所ある大きな二世帯住宅。1階にも2階にも水洗トイレがある。
二世帯住宅の1階の広々としたリビング。きれいに使っていたのがよくわかる。
物件購入者に無償譲渡される裏山。手入れすればマツタケが収穫できるかも。
高畠町移住支援情報
ホームステイとインターンで町を知ってもらう取り組みを実施!
町では田舎ホームステイと地域探検型インターン(移住体験事業)を実施。町のユニークな方がたと生活や仕事をともにすることで、「暮らし、なりわい、コミュニティ」を体験してもらう。4つのインターン先と2つの滞在先から1つずつ選び、1週間の滞在となる。参加者同士の交流会なども実施する。
問い合わせ:高畠町企画財政課 ☎︎0238-52-1112
https://www.town.takahata.yamagata.jp/
高畠町青年会議所主催の雪板イベントに参加した方がた。
ホームステイ先のギルドハウスで、地域の課題についてディスカッションした。
「移住担当の私も仙台からの移住者です」
担当の企画財政課・阿部さんとご家族
文/山本一典 写真/鈴木加寿彦
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