田舎暮らしの本 Web

  • 田舎暮らしの本 公式Facebookはこちら
  • 田舎暮らしの本 メールマガジン 登録はこちらから
  • 田舎暮らしの本 公式Instagramはこちら
  • 田舎暮らしの本 公式X(Twitter)はこちら

田舎暮らしの本 1月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

炭焼き、かごづくり、農業、マタギ猟――雪国の恵みを活かし、生かされて【山形県小国町】

掲載:2021年10月号

炭焼きなどを手がける柳沢悟さん、かご作家の熊谷茜さん夫妻はともに首都圏の出身。山形で出会って結婚し、作業小屋を意味する「kegoya(木小屋)」という屋号を名乗って多彩な活動を展開している。

左から悟(さとる)さん、悠音(ゆうおん)くん(6歳)、茜(あかね)さん、実羅(みら)ちゃん(8歳)。後ろの建物が住んでいる家だ。

山形県小国町(おぐにまち)
飯豊(いいで)連峰と朝日連峰に挟まれ、約9割はブナを中心とした広葉樹の森が広がる町。日本有数の豪雪地帯で、中心部でも積雪は2mを下らない。東京から山形新幹線と在来線で約3時間30分。

 

雪国だからこそできる、山に寄り添う暮らし

「ねえ、この柿食べたいよお」と悠音くんがおねだりすると、すかさず「かじってごらん。甘ければ甘柿だし、豆柿(小さな渋柿)なら舌がピリピリするから」と茜さん(41歳)。何げない親子の会話だが、何でも体験させる母親の愛情が伝わってきた。

 この日は染料などに使う柿渋づくりの共同作業。豆柿を枝から落とし、おしゃべりをしながら細かく切り刻み、各自が沢水の入った瓶に浸し、1〜3年くらい発酵させる。火も使わないまったくの天然素材だ。

買ったばかりの高枝切りばさみで豆柿を落とす地域の女性仲間。じつにたくましい。

収穫した豆柿は包丁で細かく切り刻み、みんなで山分け。右の女性が着ているシャツが柿渋で染めたもので、防虫効果もある。

 コロナ禍で規模は縮小しているが、この柿渋づくりだけでなく、かごの材料を集めたり、ウメを収穫したり、流しそうめんをしたり、さまざまな催しで地域の人たちが集まってくる。

「夫婦だけだとそれぞれの仕事を優先してやらない作業も、みんなでやるから楽しいんですよ。小国町も高齢化が進み、昔の生活の知恵が忘れ去られようとしています。私たちが少しでもそれを受け継いでいければ」と茜さんは話す。

近所の人たちと、流しそうめんを楽しむ。とにかく地域活動が盛んだ。(写真提供:中川裕貴さん)

 東京生まれの彼女は自然にかかわる仕事がしたいと、18年前に山形県の森林体験施設でクラフト教室を担当。同時にザルなどの生活用品を手づくりする地元の高齢者と交流を深め、かごづくりに目覚めた。その自然な作風は、ポーランドで開かれた世界かご大会で入賞するほど評価が高く、多くのファンを持つ。

茜さんがかごを製作中。材料はアケビ、クルミ、ガマなどの天然素材を使う。http://kegoya.me

このかごのヒモも柿渋で染めたもの。自然への細かなこだわりが作品に活かされている。

 夫の悟さん(40歳)は有機農業をやろうと全国を回っているうちに、小国町で炭焼きをしている人と出会い、この地で活動することを決断。炭焼きは主に冬の仕事だが、多いときで年に900㎏もの白炭を生産していた。

「徹夜仕事が続くので、子どもが生まれて規模を縮小しました。材料のナラ材は山の持ち主でさえ場所がわからなかったり、共有地だったりするので、人脈を頼りに集めています」

「平均で1回5俵の白炭をつくっています」と悟さん。この窯は3代目だとか。

 雪国の小国町にはマタギ文化も息づいており、4月のクマの害獣駆除には悟さんも参加する。5月〜6月は山菜採り。自宅の近くに広い共有地があり、会費を払って使用権を得ている。山からの豊富な栄養分によって上質のゼンマイが収穫できるのだとか。早朝の2時間だけで20㎏以上にもなる。

 夏から秋は有機農家となり、米、野菜、蕎麦、麦などを栽培。町には労働や作業を重視するミッション系の高校があり、そこにジャガイモも納品している。もちろん、マイタケなど秋のキノコも豊富。自然相手の作業は一家に自給をもたらし、収入源にもなっているのだ。

「雪国だからこそ、やることが一年中ある。高齢者が多いから、たまに雪下ろしだって頼まれるんですよ」と悟さん。

 自宅の周りには、板倉を移築した茜さんのアトリエを含めて作業小屋がいっぱい。山に寄り添う夫妻の暮らしには、「木小屋」という屋号がピッタリだ。

「この集落で農家はうちだけだから、水路の管理が大変」と悟さん。米はコシヒカリのほか、餅米もつくっている。

飼ったばかりのニワトリを見せてくれる悠音くん。6羽にそれぞれ名前がついていた。

小国町移住支援情報
住居や仕事探しに一部助成あり!

小国町の生活を体験できるお試し滞在を支援。町外在住の人が移住やUターンを目的に町内で住居や仕事を探す場合、交通費や宿泊費の一部を助成する(両方の合計で1世帯につき上限2万4000円)。また、無料で最長2週間使用できるお試し住宅もあり。また、オンラインでの相談にも対応(無料)。1回30分程度で月~金曜9:00~16:00(12:00~13:00除く)。気軽にご相談を。

お問い合わせ:小国町総合政策課 ☎︎0238-62-2264
https://yamagata-oguni-shiroimori.jp/living/

ブナの原生林を歩く森林セラピー基地「温身平(ぬくみだいら)」。

過去に開催した移住フェアの様子。

「温かい人であふれる小国町にお越しください!」(小国町総合政策課の益田さん)

 

文/山本一典 写真/鈴木加寿彦

この記事のタグ

田舎暮らしの記事をシェアする

田舎暮らしの関連記事

大学を出てマタギに入門。森で生きる知恵を体得して生き物たちとタメを張る!【秋田県北秋田市】

8世帯の集落で手づくり暮らし。時計型ストーブが調理に大活躍【宮城県石巻市】

体調不良をきっかけに農業の道へ。夫の実家でオーガニックに子育て中【岩手県八幡平市】

山で営む不安のない暮らし。父から子に伝える自給の知恵【兵庫県朝来市】

8000坪の山で自給生活。6坪の小屋で育む家族の温もり【岡山県美作市】

東京から祖父母の家へ孫ターン。家族で育む農ある暮らし【青森県五戸町】

温暖な気候、豊かな自然の恵み、アクセス良好! 瀬戸内エリアの人気のまち「AKB(赤穂市・上郡町・備前市)」で暮らそう

移住者数が3年で3倍に! ずっと住み続けたいまち【愛媛県今治市】本誌ランキング2年連続 全4部門1位!

【築100年古民家】絵本のような絶景に包まれた秘境の美しい伝統住宅!200万円の9LDKはほぼ改修不要!? 宿泊施設や飲食店にも活用可能!【福島県金山町】