移住先として人気が高い霧島市だが、このところ若年層の移住が増えているという。子育て世代にとってどんな魅力があるのだろうか。市外、県外からも訪れる親子連れがいるという市内の子育て施設に注目し、霧島市の魅力をリポートする。
掲載:2022年10月号
子育て世代が注目。移住人気が急上昇
霧島市は、日本初の国立公園を有する全国屈指の観光地だ。天孫降臨の地としても知られ、今年2月には霧島神宮が国宝に指定されて話題となった。そんな山川海が揃った自然の環境や、奥深い歴史情緒の豊かさはもちろんだが、じつは商業施設や工業団地を有する鹿児島県第2の都市でもある。
平成18年と早期から移住定住の専門部署を設置したこともあり、移住先としても人気で、最多の令和元年には287人など、数多くの人が移住。しかも定住率(5年後も居住)は、直近3年間で90%超と、満足度の高さがうかがえる。
移住希望者が霧島での生活を実感できる「きりしま暮らし大大大満喫ツアー」も好評だ。温泉、自然、グルメなど霧島の魅力を満喫するほか、先輩移住者との交流や空き家探訪も。都会と田舎両方の特徴を持つトカイナカの市とあって、農作業など田舎体験をしたい人と市街地での生活を見たい人双方の要望に応じたプランを設定。今年1回目のツアーは、10月14日から2泊3日で行われた。
「以前は年配者がスローライフをイメージして移住するケースが多かったが、最近は若年化しているのが特徴」と話すのは、霧島市地域政策課の松元聖哉さんだ。移住者のうち世帯責任者が20〜30代の割合を、平成20年〜令和3年までと、令和2年〜3年とで比較すると、前者が43.9%だったのに対して、後者は56.6%と増加。子育て世代が注目しているまちなのだ。
絶好のビュースポットが親子の遊び場に変身
子育て世代に人気の理由は、子育てに適した豊かな自然環境があること、働く場があること。さらには、商業施設や病院などの都市機能が充実していること。そして子育て世代の声に耳を傾けた魅力的な施設を有していることにもある。
「雨の日に子どもを遊ばせる場所が少ない」という市民の声に応えて昨年7月には「霧島市こども館」が誕生した。市内だけでなく、市外や県外からも来場があり、新型コロナウイルス感染症の影響により2カ月の休館をしながらも、屋内・屋外を合わせて年間で約7万人(重複あり)が訪れる人気ぶりだ。
市街地から車で約20分。標高200mの丘に立つこども館を訪れると、とびきりの眺望に目を奪われる。県を代表する山である霧島山、桜島、開聞岳のすべてと鹿児島湾、そして弧を描く霧島市街地が一望できるのだ。子どもたちのはしゃぎ声が響く広場には、さわやかな風が渡る。疲れたときも、この場所に来るだけで心が軽くなり、子どもとの時間が再び輝きそうだ。
霧島市子育て支援課の吉村祐樹さんは、「霧島市こども館は、テーマエリア別に、遊ぶことに特化した施設」と話す。以前は展示場や展望所として使われていた建物を、ユニークな遊び場にリノベーションしたもので、屋内外に子どもが夢中になる遊具を設置。「あそびの草原」と名づけられた1階は、6カ月〜1歳児が穏やかに遊べるスペース。屋根のある外遊びコーナーは、雨の日の外遊びにも便利だ。2階は2〜6歳児がアクティブに過ごせる「あそびの森」で、アスレチック遊びと知育遊びができる部屋に分かれている。
「ここに来てほっとしたり、気づきや発見を楽しんだりしてもらえたら」とは、小学校校長の経験もある德石誠館長だ。既存の遊具に加え、楽しいおもちゃや展示物を手づくりしたり、音楽家による演奏会や親子ヨガ教室、親子製作イベントを企画するなど、さまざまな遊びを仕掛けていて、それらを無料で楽しめるのもうれしいポイントだ。
【霧島市こども館2F あそびの森 ※2〜6歳対象】
【霧島市こども館1F あそびの草原 ※6カ月〜1歳対象】
市街地での子育てを助ける遊び場兼子ども預かり所
市街地での子育てで心強い存在が、店舗が立ち並ぶ中心街の駐車場ビルに設けられた「キッズパークきりしま」。雨天や酷暑でも遊べる施設だ。未就学の親子のために無料開放している「ふれあい広場」のほか、買い物や仕事などに出かける際には、1人1時間300円で「子育て一時預かり」が利用できるのもありがたい。毎月、1〜3歳児対象の「子育てサロン」と「親子体操」は予約なしで参加できるので、ほかの親子との交流が気軽にできると好評だ。
そして、霧島市では子どもが成長したあとのサポートも用意しているという。進学後に霧島で働くことで、奨学金の返還が一部免除される「霧島ふるさと愛」の制度だ。
ふるさとからの愛、ふるさとへの愛が、子どもたちを温かく育ててくれそうだ。
霧島市移住支援情報
霧島暮らしをリアルに知るイベントやツアーが充実
霧島暮らしをリアルに知ってもらおうと、きめ細かなプランでオンライン移住イベントや移住体験ツアーを開催している。11月~1月にかけては、実際の移住者によるトークセッションや観光スポット巡りをオンラインで配信する、霧島オンラインツアーを全3回開催予定だ。
(詳細はこちら https://www.city-kirishima.jp/kyodo/enjoy_kirishima.html)
移住を支援するため、霧島市に移住し、住宅を取得した人に最大50万円の補助金がある。さらに、高校生以下の子どもがいるなど子育て世代の場合30万円の加算金も。そのほか、東京圏から霧島市に移住して就業・起業した人には、単身60万円、2人以上の世帯では100万円の支援金も。テレワークも対象だ。
問い合わせ/霧島市地域政策課 ☎︎0995-45-5111(内線1543、1544)
https://www.city-kirishima.jp/hisyokouhou/shise/ijuteju/
相談しやすい! 子育て相談の窓口を一本化
子育てに関する困りごとや相談にワンストップで応じてくれる「こども・くらし相談センター」を国分シビックセンターに開設している。子育て、児童虐待、DV、いじめ、不登校、生活困窮など、子どもにかかわる相談の窓口を集約したことで、必要なサービス、支援などをスムーズに提供できるようになった。
問い合わせ/こども・くらし相談センター ☎0995-64-0881
文/マエダマリ 写真/岩松敏弘
写真提供/鹿児島県霧島市、キッズパークきりしま
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