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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

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【田舎物件の朗報】農地法の一部改正で農地取得のハードルが大幅に下がった!農業や家庭菜園に興味がある方は必見。田舎暮らしのメリットとは

執筆者:

農地法改正で農業・家庭菜園がやりやすくなる!  本誌ベテランライターが解説!

 社会情勢の変化に応じて、田舎暮らしに関係する法律もたびたび改正されてきました。特に農地法は農業や家庭菜園を始めたい人にとってやっかいな法律……。農地法は、農地保全と食料安全保障を目的とした法律です。そのため、農地を農業用以外の目的で使用することを規制し、農地の取得に条件制限を設けています。この規制が、農業や家庭菜園を始めたい人にとって大きな障害となっていました。

文・写真/山本一典

 朗報です!

 2023年4月から、許可要件の1つが大幅に緩和されました。
 その具体的な内容と解釈などについて、詳しく解説していきます。

農地の売買・貸借・相続に関する制度について(農林水産省HPより)

 

農地法の下限面積の廃止について

 都会から田舎に移住して農家を目指す新規就農は、今でこそ全国で見られるようなライフスタイルになりましたが、実は10年ほど前までは農地を取得するのが難しく、新規就農のハードルが高かったのです。農地を取得するには、農地法第3条に基づいて地元の農業委員会に申請し、許可を得る必要があります。しかし、この申請には都府県では5反歩(1500坪)、北海道では2町歩(6000坪)以上の経営面積の要件を満たす必要がありました。これは、現実的な農業経営を行うためには十分な面積ではないのですが、農地を保全するための法律である農地法が、安易な農地取得を認めないよう定めたものです。そのため、取得する農地が5反歩に満たない場合には、とりあえず仮登録で権利を保全したり、不足分の土地をを物件周辺で買い増し、または借り増しすることで、面積要件を満たす必要がありました。

ほぼ5反歩の畑。総面積で最低このくらいないと、かつては3条申請ができなかった。
写真は、ほぼ5反歩の広さの畑。総面積で最低このくらいないと、かつては農地法3条の申請ができませんでした。

 近年、田舎暮らしを始める若者が増え、地方創生を後押しする動きが高まっています。その一環として、新規就農のハードルを下げるための施策が講じられています。

 その一つが、農地取得の面積要件の緩和です。具体的には、各農業委員会が独自に定めることができる「別段面積」が導入され、面積要件を1反歩(=10a=300坪)まで下げることが可能になりました。これにより、より小規模な農地を取得することができるようになり、新規就農者の増加が期待されています。

 さらに、数年前から各地で広まっている「農地付き空き家」に関する取り決めも、新規就農の促進に効果を発揮しています。これは、空き家バンクの例外として、農地が1aまたは1㎡以上あれば空き家と一体で農地取得を認めるというもの。1㎡とは畳1枚にも満たない広さであり、面積の制限はないに等しいのです。小さな畑でも農地であることに変わりはないので、空き家バンクを推進する観点から大胆な見直しが行われたことになります。

 これらの施策により、今後はより多くの人が新規就農に挑戦できるようになりました。

「農地付き空き家」は、田舎物件では珍しくありません。各自治体の空き家バンクのサイトから、面積を気にせず農地を取得できる物件を検索することができるようになりました。
「農地付き空き家」は、田舎物件では珍しくありません。各自治体の空き家バンクのサイトから、面積を気にせず農地を取得できる物件を検索することができるようになりました。

肝心な話はここから。

 「農地付き空き家」は近年増加しており、その広がりを受けてのことと思われますが、2023(令和5)年4月1日から農地の下限面積、別段面積、さらに空き家に付随する農地についても、面積要件を廃止する法改正が行われました。つまり、農地を取得する際には面積を気にする必要がなくなったのです。これは画期的な改正といえるでしょう。

 ただし、すべての自治体が面積要件を廃止しているわけではありません。別段面積を表記している自治体もあるので、ホームページで確認するか、移住候補地の相談窓口に問い合わせることをおすすめします。

農地法改正でも変わらないこと

 農地法第3条2項の許可基準には以下の3つの原則があり、それに該当しない場合は農地取得が認められません。

「全部効率利用」・・・本人または世帯員等が、権利取得後にすべての農地を効率的に利用して耕作すること

「常時従事」・・・本人または世帯員等が、権利取得後に必要な農作業に常時従事すること

「地域との調和」・・・周辺農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生じないこと

 「全部効率利用」ですが、田舎物件では農地が1町歩(約3,000坪/9917.36㎡)以上あるものが珍しくありません。しかも、過疎地では数ヵ所に分散しているケースが普通です。取得した農地を放置して荒れ放題にしていると問題視される可能性はありますが、すべての農地を効率的に利用するというのは現実的には難しいと考えるべきでしょう。ちなみに、1町歩以上の農地を耕すにはトラクターは必需品です。

 また、「常時従事」はよく出てくる言葉ですが、年間従事日数を150日以上などと申請する場合もあります。しかし、農業委員会が新規就農者に対して、農業にどれだけ従事しているかを監視するほど暇ではありません。むしろ、農地がある市町村、または隣接する市町村に住民票を移して、農作業を行っていることが最低限の許可要件になると考えるべきです。住民票を移さずに農地を取得し、東京から週末に通って農業をしたいというライフスタイルは通用しません。

 「地域との調和」とは、その地域で行われている農業に支障を与えないことです。例えば、無農薬や減農薬で作物栽培が行われている地域で農薬栽培を実施すると、周辺に悪影響を及ぼしてしまいます。また、水利調整が行われている地域で勝手な行動をすると、トラブルになる可能性があります。農地を取得する際には、地域の実情をよく聞いておくことが重要です。農地に対する考え方は、集団で農業を基幹産業にしている地域と、離農した農家が多く遊休農地が目立つ地域とでは異なります。特に前者の場合は、地域との調和は円満な農地取得のキーワードと考えましょう。

広い農地を効率的に利用するためには、トラクターは必需品です。新品を購入するよりも、中古を買うか、農家に借りた方が賢明です。
広い農地を効率的に利用するためには、トラクターは必需品です。新規就農者は新品を購入するよりも、中古を買うか、農家に借りたほうが賢明です。

 中古トラクターは、新品よりも安価で手に入れることができます。また、メンテナンスや修理が簡単な車種を選ぶことで、コストを抑えることができます。近隣の農家からトラクターを借りる場合は、借用料を支払う場合も稀にありますが、トラクターの購入費用やメンテナンス費用がかかりません。広い農地を利用する場合は、購入や借用を検討することをおすすめします。

取得した農地は荒らさないのが原則です。この写真は大豆の苗を植えているところ。
取得した農地は荒らさないのが原則です。この写真は大豆の苗を植えているところ。

 農地は、国や地域の食料を支える重要な資源です。農地を荒らしてしまうと、食料生産に影響を及ぼす可能性があります。また、土壌の流失や水質汚染などの環境問題にもつながります。農地を取得したら、有効に活用し、荒らさないようにすることが大切です。

果樹園も農地の一種ですが、多くの場合、他の果樹園と集積して産地を形成しています。そのため、果樹園を経営する際には、地域との調和に配慮することが重要です。
果樹園も農地の一種ですが、多くの場合、他の果樹園と集積して産地を形成しています。そのため、果樹園を経営する際には、地域との調和に配慮することが重要です。

 農薬散布や肥料散布を過剰に行うと、周辺の環境に悪影響を及ぼす可能性があります。果樹園を経営する際には、これらの点を考慮し、地域住民と協力しながら、産地形成を損なわないような農業を目指すことが大切です。

養蚕に欠かせない桑畑は農地の一種ですが、需要の減少により、野菜畑やその他の用途に転用されることが増えています。
養蚕に欠かせない桑畑は農地の一種ですが、需要の減少により、野菜畑やその他の用途に転用される事例が増えています。


用水を使う農地には、田んぼだけでなく、写真のワサビ田や蓮田も含まれます。

 ちなみに農地とは、登記簿の地目が「田」または「畑」の土地を指します。一般的には、田んぼや野菜畑を思い浮かべる人が多いのですが、果樹園、桑畑、タバコ畑、ワサビ田、蓮田など、さまざまです。植木畑は、山林と見分けがつきにくいですが、耕耘、施肥、除草などの「肥培管理(ひばいかんり)」を行えば、農地となります。また、畜産のための採草地や放牧地も、地目が「山林」や「原野」であっても農地法の対象となります。

放牧地は農地ではないものの、農地法の対象になることが第2条で明記されています。
放牧地は農地ではないものの、農地法の対象になることが第2条で明記されています。

 今回の農地法第3条の改正により、農地の取得が容易になることで、新規就農者の増加や農業経営の活性化が期待されます。また、農業従事者の高齢化や減少が進むなか、農業の担い手の確保にもつながります。この改正を機に、農業に興味のある人は、農業に参入してみたり、移住を検討してみてはいかがでしょうか。

文・写真/山本一典

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この記事を書いた人

山本一典

山本一典

田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。

Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/

田舎暮らしの本編集部

田舎暮らしの本編集部

日本で唯一の田舎暮らし月刊誌『田舎暮らしの本』。新鮮な情報と長年培ったノウハウ、田舎で暮らす楽しさ、心豊かなスローライフに必要な価値あるものを厳選し、多角的にお届けしています!

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