田舎暮らしの本 Web

  • 田舎暮らしの本 公式Facebookはこちら
  • 田舎暮らしの本 メールマガジン 登録はこちらから
  • 田舎暮らしの本 公式Instagramはこちら
  • 田舎暮らしの本 公式X(Twitter)はこちら

田舎暮らしの本 11月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 11月号

10月3日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

日々是好日/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(51)【千葉県八街市】

執筆者:

 3月2日「春寒のこつんと打ちて茹卵」。

 光は薄く、風がかなり冷たい朝だ。僕の卵料理はふだん目玉焼きかスクランブルが多いのだが、今朝は茹で卵にしてみた。読売新聞「四季」で目にした句の影響。卵を2つに切り、梅の枝を1本手折って添えた。

春寒のこつんと打ちて茹卵  渡部有紀子

現代人の生活から自然が失われたと嘆く人は多い。もしかすると、ひっそりと息づく身辺の自然に気づかないだけではないか。この句、茹で卵を割る乾いた音に春先の寒さを感じている。音一つにさえ季節は宿る。句集『山羊の乳』から。(長谷川櫂氏の解説)

 今日の風はかなり体にしみる。僕だけでなくヒヨコも寒いだろうが、庭で動いた方がいいよな、ママと散歩に行こう・・・このヒヨコ、前に書いた、小さい体のチャボのオスが、大きな体の鶏のメスに、ずっこけつつ、のっかって、受精させたあれである。毛の色と体形は母親そっくり。チャボのヒヨコは羽が2色か3色のまじりになるのが普通だが、こいつは単色である。さてと寒いな。でも頑張っていこう。畑のあちこち、清掃を兼ねて焚火をする。秋遅くまでトマトがあった場所。ここで焚火をし、出来た灰をすき込んでビニールトンネルを1本仕立てる。

 人間が湯浴びできるくらいのサイズのポリの箱を持ってあっちへ行き、こっちへ行き、大きな山で6つぶんを集めた枯れ木。たちまちのうちに燃え上がった。火が落ち着いたところで周辺に鍬を入れる。畑表面の土も黒いが、強く打ち込んだ鍬の力で下から現れた土はもっと黒い。雨続きだったせいで水をいっぱい含んでいるためだ。赤と黒は我が人生の土台・・・そう、焚火の炎の赤と、足元から躍り出た土の黒は見事な対照の色合いである。その赤と黒が百姓の心に平安をもたらす。生きる力をくれる。ガールフレンド・フネは我がことを原始人と呼ぶが、原始人を原始人たらしめるものがこの赤と黒なのである。上の句の解説において、長谷川櫂氏は「ひっそりと息づく身辺の自然に気づかないだけではないか・・・」そう書いておられるが、いま僕の前にある自然は明瞭である。焚火の炎は、その高さと発する熱でひっそりどころか強烈な自己主張をする。それに対して、ついさっき地下から顔を出した黒い土はちょっと控えめだ。されど、僕の手によって出来上がった2×8メートル、タップリ水分を含んだ黒い土の帯は間違いなく自然の風景の一端である。日々是好日・・・この演出の役を担うのが赤と黒、ふたつの色の組み合わせなのである。

この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

田舎暮らしの記事をシェアする

田舎暮らしの関連記事

【地方移住の選択肢「地域おこし協力隊」】~地域を盛り上げ仲間とともに成長する!~ 各地の協力隊の活動内容やメッセージを紹介

農業はやっぱり3Kと思われているのか/自給自足を夢見て脱サラ農家40年(74)【千葉県八街市】

絶対に訪れたい!【無印良品の地域連携スポット】後編/宿泊施設編

【海好き必見!】サーフィンや釣り、SUPなどが日常的に楽しめる! 海の近くで暮らす夢をかなえた人たち| 海辺の物件を購入する際のポイントも紹介

絶対に訪れたい!【無印良品の地域連携スポット】前編/地域とつながる拠点&キャンプ場編

土の下から聞こえて来るG線上のアリア/自給自足を夢見て脱サラ農家40年(73)【千葉県八街市】

《シニア専用ハウスあり》《一人暮らし・老後も安心》海も山も一望できる「伊豆下田オーシャンビュー蓮台寺高原」で自分らしく暮らす【静岡県下田市】

注目の移住先! 豊かな自然と暮らしやすい利便性が調和した東京・多摩地域で暮らしませんか【東京都多摩地域】

50代から「地域おこし協力隊」で夢への第一歩を踏み出す! 長年の社会人経験を活かして充実した人生を