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田舎暮らしの本 12月号

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田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

僕の百姓メシ/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(47)【千葉県八街市】

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 10月24日。「食ってばかりじゃなく、たまにはささやかな風流をしよう」。本日、パーフェクトな空である。風がない。気温は24度。湿度は低い。そこに青い空。白い雲。赤く染まった柿の実。田舎暮らしのシアワセ・・・それを絵に描いたら、きっとこんな風景になる。ハウスにこもる。夏草が繁茂したハウス。それを片付けるのに一昨日から通算で5時間。一昨日は白菜を植えて、今日はカリフラワー。どっちもちゃんとした大きさになるのかどうか、自分でもわからない。平年なら9月にやることを今ごろやっているのだから。でも、あきらめずに夢と希望を持って生きよう・・・ちょっと大げさだが、わずか5センチのポット苗を土に埋め込みながら、そう思う。

 ハウスの中は暑いので大汗をかいた。汗で濡れたシャツを着替え、柿を2つ口に入れて、ちょっと気分を変えようか。食ってばかりいないで、たまにはささやかな風流もやろうじゃないか、なあ、クロちゃんよ。ミニバラの手入れをする。枯れ枝を切り、ちょっと窮屈そうにしているものは大きめの鉢に移し替えてやる。2メートルを超えるアーチ作りのバラもいいが、僕はミニバラの方が好き。15鉢くらいあって、ずっと畑仕事に走り回ってそのバラにまで手が回らなかった。すまなかったなあ、ほったらかしで・・・。ミニバラのいいところは、2輪、3輪咲いたものを、赤にするか、黄色にするか、ピンクがいいか・・・その日の気分で朝の食卓まで簡単に移動できるところだ。ほんの小さな花だけれど、珈琲の香りをチョッピリ引き立たせてくれる。

 枝豆がふくらみ、サトイモの葉が枯れ始める。秋が深まっていることをそれで知る。写真の枝豆は本来は大豆種。それを来月半ばまではエダマメとして食べる。基本的にはあっさりと、塩ゆでにして晩酌のつまみとするが、ちょっと手間をかけ、莢から豆を取り出し、シーチキンと合わせてさっと炒めるのもいい。サトイモは・・・たいていの人は包丁を使うだろうが、僕は丸ごと茹でてから皮をむく。ごく簡単、ワンタッチで皮が取れるし、包丁でむくより実の無駄がない。そして食べ方は、すりおろした生姜とユズをのせる。味付けは、今夜は「信州の香りわさび醤油ドレッシング」というのをかけてみた。そうそう、今日の朝日新聞「Bon Marche」は栗原はるみさんのインタビューだったね。僕と同じ76歳。こう語る。

料理は立ち仕事で手指もよく使うので、自然と筋力がつくみたい。姿勢がいいと言われますし、メイクせずに素肌です。なぜか仕事が一段落する19時ころの肌が一番若く見えるそうです(笑)。

 10月25日。「老化が止まる食事術」。朝は10度ちょっとくらいまで冷えるようになった。今朝は気分を変えて、何日ぶりかの自転車とする。原宿か、六本木か、そんな華やかな雰囲気のタウンがうちから3キロ足らずの場所にある。ホテル、レストラン、カフエ、ゴルフ場、愛犬の運動場、富裕層向けのマンション。そこに春以来、新たな大工事が行われている。村の友人Fさんが教えてくれた、遊歩道なのだと。あれは何という名前だっけ。スケートボードみたいでエンジンで動くやつ・・・キックボードか。それに乗って、周回するとたぶん10キロくらいになる道を愛犬を従えて走るということが想定されているらしい。唐突に、格差社会という言葉が僕の頭に浮かぶ。諸物価高騰の今、3食たべるのをあきらめるという人もいる一方で、ウン、楽しそうだなあ、愛犬とともに洒落たホテルに泊まり、林の中を走り、いっときの楽園を謳歌できる人がいる。

 昨日聞いた天気予報よりもずっと良い天気だ。だから今日の仕事は大いに捗った。ハウスの中にカリフラワーを定植し、トンネルを仕立ててホウレンソウをまいた。さらに最後の柿100個ほどを苦心しながら収穫した。そして午後3時、荷造りの手を休めて食べたのがこれ。猿が好んで食べるところからサルナシの名が付いたらしい。キウイと同じマタタビ科で、姿もよく似ている。ただし非常に小さく、完熟させないとうまくないし、完熟したものを無傷で収穫するのは厄介という難点がある。口当たりはとてもよい果物だ。僕はもっぱらそのままの生食だが、今日はヨーグルトにまぜて食べてみた。苗木を植えたのはもう30年も昔。例によって欲張って、4か所で10本くらいを植えたのだが、収穫にはバラツキがある。品種の違いであるらしい。僕は知らなかったが、おつゆに入れたり、てんぷらにしたりという食べ方もあり、発酵させて酒を造ることも可能だという。それともうひとつ・・・強壮効果もある果物であるらしい。

 荷造りしながら広げた新聞の一面で『老化が止まる食事術』(宝島社)という本の広告が目に留まった。

がん、認知症、糖尿病、病気に負けない体を細胞からつくる! 体のサビを止めるパプリカ、ボケ防止にはくるみ、など、医療だけに頼らずに体が元気になる方法をわかりやすく紹介・・・。

 とある。たしかに、それぞれの食品には、ある病気を予防する、あるいは改善するといった特性があるようだ。例えばよく耳にするのがブロッコリーにはがん予防の効果があるとか。僕自身はどうなのか。医学雑誌の編集に関わっていたせいだろうか、専門家の指摘、論述には意識を向けて、心にとどめる。ただ、ずぼらな性格ゆえか、効果アリとされた食品にひたすら邁進するということができない。でもまあいか・・・ずぼらの言い訳半分で思うのだ、色々食べていればどこかで必ず当たるさと。

   

 今夜のワインのつまみ3品のうちのひとつはクロダイだった。海育ちだったせいで、魚を食べずにはいられない。ただし、農村地帯の我がまちではどの魚も高い。そこで僕は、三陸や九州から取り寄せる。大箱、10キロを。1万円近くするけれど、量から考えれば割安だ(3分の1くらいはチャボたちの餌になるし)。割安の理由は魚体そのまま。ワタもウロコも自分で取らねばならない。でも僕は父の包丁使いを見様見真似で覚えたからそれはちょろいこと。父は漁師から魚を買い付け関西の市場に出すという仕事をしていたのだ。時代のせいゆえ貧しい食生活だったが、魚だけはふんだんに食べた。で、今日の本題、老化が止まる食事術・・・僕は自分の体験を通して思うのだ。本質的に老化は避けられないものだけれど、それを遅らせることはできる。そして、遅らせるための3つの要素とは、食事、ちょっとキツ目の労働(運動)、それとクヨクヨしない精神。食事につい言えば、毎日、野菜と果物を10種類くらい、それに肉、魚、ヨーグルトを欠かさず僕は食べる。どれがどう自分の体に効果的であったか、子細な考察はできないけれど、結果論で言うならば、あと2か月ちょっとで77歳になる僕は、ここまでがんになることもなく、糖尿病にも高血圧にもならずに暮らすことができた。かなりハードな肉体労働を連日、少なくとも5時間やっても息切れすることはない、地温50℃の畑で力仕事をしても熱中症とは無縁・・・。良質な食生活は病気を遠ざけ、パワーをくれ、老化を遅らせるための根幹である、そう思うのだ。

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