ついに炉台が完成した和田邸。今回、最も高価な薪ストーブ様が、その姿を現す! そして連載は大団円へ……。
掲載:2019年8月号
見えないところはケチるドケチ星人の作法
前号で完成した炉台が想像以上の出来栄えで、ほくそ笑む和田である。今回はついに薪ストーブ様を設置するのだが、それと併せて煙突を取り付けなくてはならない。
既報のとおり、屋根にはすでに煙突の頭部が設置されているが、室内部分はこれから接続するのだ。
ところで読者もご存じのとおり、薪ストーブの煙突はこだわるとものすごく高額になる。
水野「ホームセンターで銀色の煙突が1m1000円くらいで売っているのを見たけど?」
和田「それじゃあダメなの、そもそも直径106㎜で細いし。欧米メーカーの薪ストーブの煙突は直径152㎜が標準だから。そんなわけでイギリス製の高級煙突を入手しました」
阪口「152㎜でも、うちは国産のもうちょっと安いやつだぞ。性能なんて変わんないよ」
和田「いいの! そもそも屋根上にイギリス製使っちゃったから、同じメーカーじゃないと接続できないし、薪ストーブにはこだわりたいの!」
見栄えのするところには金を惜しまない。見えないところは、とことんケチる。それがドケチ星人の作法である。
さっそく作業に入ろう。
まずは天井に取り付ける鉄板の加工だ。煙突を貫通させる天井の仕切り板にするのである。
和田「市販品もあるんだけどさ、煙突を通す丸い穴が開いた鉄板が1万2000円くらいするのよ」
水野「そこをケチって自作するのね」
和田「倍以上の大きさの鋼板買っても2500円だからね」
和田が持ち出してきたのは、例によってあえて雨ざらしにしてサビさせたという鉄板。よくわからないこだわりである。天井の開口部に合わせたサイズにカットし、煙突を抜く部分を鉄鋼用の刃を付けたジグソーで丸く切り抜く。これを下から天井に取り付けるのだ。
和田「その前に、この煙突を黒く塗るから」
と言って持ってきたのは、なぜかそれだけ銀色の短い煙突である。
阪口「なんでこれだけ無塗装のステンレスなのよ?」
中山「しかも、たった25㎝って。長さ、中途半端じゃね?」
和田「じつは、屋根からつながる断熱二重煙突の突き出しが短くてさ。天井下まで突き出なかったから、急きょ買い足したの。ただ、室内は断熱材の入っていないシングル煙突で黒塗装なんだけど、天井から上の断熱二重煙突は安い無塗装にしたんだよね。黒塗装は無塗装より3000円も高いから」
水野「それで室内に飛び出す部分だけ黒く塗って、煙突の色を合わせるわけね」
そういえば、屋根上の煙突も無塗装のシルバーである。さすがドケチ星人。
こうして足りない部分の断熱二重煙突を塗装して取り付け、これを貫通させて天井に鉄板の仕切り板を設置する。しかし、この鉄板がけっこう重たいのだ。天井は床から約4mと、脚立のてっぺんに立って手を伸ばしてなんとか届くという状況。この体勢はかなりツライ。
和田「ちょっと! 誰か手伝って!」
中山「やだよ。危ないもん」
水野「落っこちてきたら絶対、けがするレベル」
和田「大丈夫だから!」
阪口「大丈夫の根拠がわからん」
和田「いいから! 早くして!」
二の足を踏む助っ人一同であったが結局、中山が下から棒で鉄板を支え、その間に和田がビス留めすることで、なんとか作業は完了。最大の難関を突破することができた。
200kgもなんとかクリア。ついに薪ストーブ様が鎮座!
そしてついに、お待ちかねの薪ストーブ様のお出ましである。
和田「じゃじゃーん!!」
一同「おおー!」
それは、アメリカの超一流メーカー、ダッチウエスト社謹製の「フェデラルコンベクションヒーターFA265」であった。
和田「いわゆる触媒式っていわれる二次燃焼方式でさ。火室で薪を燃やすでしょ。そこでまだ燃え切れていないガスを、触媒を使って高温で再燃焼させる仕組みなのよ。ガス全体の90%を燃焼させられるから、薪エネルギーの無駄がないの。それだけ暖かくなるし、煙もクリーン。カタログ上の暖房面積は144㎡だから、我が家の約2.5倍の広さを暖められちゃうわけ。それに見てよ、この美しいデザイン。薪ストーブは、置いてあるだけで絵になるってのも重要なんだよね……」
阪口「今日の昼ごはん、なに?」
水野「オムレツみたいよ」
中山「ここの家は卵が新鮮だからな」
和田「……聞けよ!」
阪口「はいはい。で、いくらだったのよ」
和田「27万円! 定価は42万円なんだけど、店舗で数回試し焚きした展示品を格安で譲ってもらったんだよね!」
水野「顔がにやけてるし(笑)」
この薪ストーブの据え付けをもって、和田邸の建築作業は晴れて終了となるのである。着工から3年9カ月。ついにこの瞬間がやって来た!
中山「しかしこの薪ストーブ、相当重いよね。どうやって家の中まで運んだの?」
和田「配送を頼むとお金がかかるから、東京の店まで軽トラで取りに行った。積むときはリフトで荷台に載せてくれたんだけど、200㎏あるから1人で降ろすときが大変でさ。ウッドデッキに軽トラを横づけ、チェーンブロックで吊り上げて台車に降ろして運んだ」
中山「ここでひっくり返して、ぶっ壊れてチャンチャンっていうのは、どうだろうね?」
阪口「ヤラセですか」
中山「ちょっとだけバランスを崩せばいいんだよ。『未必の故意』ってやつ?」
水野「ヤラセはダメです!」
和田「ていうか、やめて!」
阪口「でもホントに持ち上がらないよ……。腰がやられそう(怖)」
実際、男2人がかりで持ち上げようとしてもビクともしない。
中山「あれ? これ分解できるんじゃね?」
よく見ると正面のガラス扉や側面扉、ロストル(耐久性のある網)などが取り外せるようだ。そこで外せるものをすべて外してみると……。
中山「お、持ち上がるかも」
和田「じゃあ台車に載せたまま炉台のそばまで移動させよう!」
台車をゴロゴロ押して炉台の上に移動させる。
和田「水野さん! 薪ストーブを持ち上げるから台車どかして!」
和田と中山が「せーの!」で持ち上げる。その間に、担当・水野が台車を引き出す。持ち上げた薪ストーブを静かに下ろして無事安置。あとは位置を微調整して、室内煙突を接続すれば完成である。
中山「早く、火を入れようぜ」
我が家の完成の感慨にふける間もなく中山にせかされて、さっそく和田が火を入れる。
焚き付けに燃え移った炎が煙を上げはじめ、煙突に吸い込まれていく。こだわりの高級煙突が上昇気流を発生させているようで、炎は見る見るうちにイキオイを増していった。
中山「やっぱ火がある暮らしっていいもんだねえ」
阪口「あとは火事にならないことを祈るだけだよ。なにしろ炉台の下は薄いケイカル板1枚だし」
水野「床下はもみ殻だし」
中山「燃え移ったら、あっという間に火の海だな」
和田「不吉なこと言わないで!」
中山「薪ストーブだけに『水を差す』ようなことを言ってみました」
一同「つまんねえヨ!」
つまらないオチがついたところで作業は大団円。次回はプロの大工さんによる出来栄えチェック。そして完成披露パーティーだ!
懲りずにC国製の2度買いで無駄金をはたく
和田「そういえばさ、キッチンの引き出しが引っ掛かってスムーズに開かないんだよ。それで外してみたら、レールがゆがんでいてさ」
水野「引き出しの中身が重すぎたんじゃないの?」
阪口「レールの取り付けって結構デリケートだから、施工がずさんだった可能性もある」
和田「施工は完璧。重さも説明書の重量以下で収まっていたから問題ないはずなのよ。仕方なく同じのに買い替えたんだけど、なぜかまたダメになっちゃった」
水野「なんか以前もこんな話なかった?」
阪口「気になるお値段は?」
和田「ネットで4本セット2680円」
中山「安すぎね? それ絶対C国製だろ!」
阪口「普通は1本で1000円以上するからね」
水野「で、結局いくつ無駄にしたの?」
和田「4本セットのレール2セット分。引き出し2つダメにして、その後1本1100円の日本製を4本買いました……」
中山「いっそのこと次は“C国製で家を建てる”って企画やれば?」
和田「やらないから……」
文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回 壁の施工、窓の取り付け
第12回 差し鴨居
第13回 外壁
第14回 はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
第19回 内装工事
第20回 水回りの施工
第21回 トイレの設置
第22回 下水管の接続
第23回 下水管の接続
第24回 キッチンの施工
第25回 トイレ後日談
第26回 キッチンの施工
第27回 土壁塗り
第28回 内装&焼き杉
第29回 漆喰塗り
第30回 洗面所の施工
第31回 洗面所の施工
第32回 風呂の施工
第33回 給湯器の取り付け
第34回 混合栓の取り付け
第35回 浴槽の設置
第36回 サッシ窓の取り付け
第37回 内装や配管など
第38回 薪ストーブの設置
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com
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