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田舎暮らしの本 6月号

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田舎暮らしの本 6月号

5月2日(木)
890円(税込)

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老いと幸せ/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(49)【千葉県八街市】

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 12月20日「幸福な老い」「不幸な老い」。さらに寒さは募る。テレビは繰り返し、今シーズン最強の寒波が来ます。どうしても車で外出せねばならない人は念のため車内に非常食や寝具、簡易トイレを用意しておいてください、そう言っている。雪国に比べたら当地の寒さは甘いものだが、それでも日が高くなる時刻まではキビシイ。ビニールハウスに入ってジャガイモを植える準備をした。まずはニワトリたちが食べ残した米ぬかに鶏糞が混じったものをスコップでかき集め、20キロの袋で3つ、腰の痛みを誤魔化しつつ運ぶ。それを鍬とスコップで攪拌する。ハウスの中は外気より5度は高いし、力仕事をするゆえに体はじきに温まる。

 いつもの荷造りが思ったよりも30分くらい早く仕上がった。よっし、焚火のそばでちょっとだけ本を読もう。石川結貴著『家で死ぬということ』(文芸春秋)。著者はジャーナリストで、『毒親介護』『スマホ廃人』など多数の著書がある。僕が今回手にしたのは、自身の父親を介護し、最期を看取ったドキュメンタリーである。冒頭、ちょっと笑えるエピソードがある。父君は介護施設も入院も嫌った。家で死ぬのだと言い張る。独り暮らしゆえ、緊急の場合にとスマホを持つように勧めるも拒否。石川氏がご自身の名義で買ったものを、これ使ってと差し出すも、やはり拒否・・・僕が笑ったというのは、これらのエピソードが自分にそのまま当てはまるからである。

 病院には行きたくない、何かあっても延命処置はしてほしくない・・・それが我が願いであるがゆえ、かような本に興味を抱き、読んでいるわけだが、最近のメディア、特に週刊誌は老後の暮らしに焦点を当てた記事が多いような気がする。昨日発売の『週刊ポスト』の特集テーマは、「幸福な老い」「不幸な老い」。同じく昨日発売の『週刊現代』の特集は、「自宅で死にたい」を叶える方法・・・だった。『週刊ポスト』は実にキメ細かいテーマを掲げている。自宅は売却か修繕か、仕事は再雇用か独立か、老人ホームは都心か故郷か、薬は飲み続けるか断薬か・・・。僕の視線が止まったのは「地方移住をするかしないか」という項目を見つけた瞬間、それともうひとつ、弘兼憲史氏(76)の提言「リタイア後は自分の幸せだけを追求しよう」だった。弘兼氏は何年か前の本『弘兼流 50代からの人生を楽しむ法』(三笠書房)で、移住に対してかなり厳しい論を展開していた。定年後に田舎暮らしなんて甘すぎる・・・と言うのだ。例えば具体的には、田舎は今でも新参者を嫌う傾向がある、道ですれ違っても無視される・・・この弘兼氏の指摘のみならず、田舎における住みにくさを声高に並べたてる例は他でも少なくない。しかし、不思議なことに僕自身に当てはまることは皆無に等しい。田舎暮らしってそんなに息苦しいものなのかい・・・僕にはまるで信じられない。今朝も、ランニングの途中で、たぶん僕と同年齢かと思われる老人に出会った。彼はいくつもの大きな袋に枯葉を詰め込んでいる。それを見たのは初めてではない。村の友人Hさんが教えてくれた。誰が指示したわけでも頼んだわけでもなく、お墓に続く道路に散らばる枯葉を彼は自発的に清掃している。今朝、背中をかがめ、向こうむきになっている老人に、僕は言った。おはようございます、ご苦労様です・・・老人はちょっと驚いたような表情を見せ、少し低いトーンで、おはよう・・・そう言葉を返した。以前にも書いた。明朗な挨拶の大切さを。田舎暮らしに限らず、人間社会の交流において、良好な出発点は日常の言葉である。多弁である必要はない。技巧を凝らす必要もない。おはようございます、寒いですねえ、暑いですねえ、ゆうべの雨はすごかったですねえ、そう言って会釈する・・・それで十分だ。

 『週刊現代』の特集にも触れておこう。「長く過ごしたわが家で、自分らしい最期を迎えられる人は幸せです」という言葉が掲げられている。そうだ、そうだと胸の内で僕は賛同する。病院に入ると体力が落ちる・・・そんな逆説がある。僕にはよくわかる。病院で大切な扱いを受けるぶん、骨も筋肉も減少し、人間が本来持っている再生能力が低下するのだ。『週刊現代』で僕が注目したのは「最期まで家で暮らすといくらかかる? 介護保険をうまく使えば老人ホームよりずっと安いんです」という項目だった。上に書いたように、僕も最期まで家で暮らしたいとの願いを持つ。延命処置はしてほしくない。でもって、これは医療業界、もしくは厚労省への提案だが、要介護というところまでは行っていないが、先はそう長くない。そうした老人を1日1回、介護施設の人が来訪して体調を確認する(それ相応の料金は支払う)。そして万一重篤な状態になったなら医者を呼び、最期を看取ってもらう。この方法では介護施設も病院も儲からない。その点申し訳ない気もするが、高齢化、人口減少が叫ばれる今、老人の死亡だけは確実に増える。もちろん、なんとしても生き続けたいと願う人には手厚い看護をすればいい。しかし、僕のような考えの人も少なくないはずだ。1日1回、介護施設の「点呼」で孤独死も防げる。事後の、警察による手間も省ける。いかがなものであろうか。

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