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田舎暮らしの本 12月号

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田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

玄関づくり-小屋組み【予算200万円】DIY経験しかないスタッフが廃材で家を建ててみた【46】

玄関兼作業小屋の建築が進む和田邸である。悪天のため急きょ、床張りを先にやってしまい、今回から改めて小屋組みの仕上げ。しかしここでまた大波乱が……。

掲載:2020年3月号

ドローンから空撮。このときはまだ機嫌がよかった和田であった。

母屋の高さ調整のため5本の束を45㎜短く

 床を張り終わったところで、ようやく屋根工事の続きである。前々回までに束を立て、母屋と棟木を上げてあったので、今回は垂木を打って野地板を張り、防水シート、屋根材と進めて、最終的には「ジブリ」っぽい草屋根に仕上げる予定である。
 まずは垂木を打っていくところから始めよう。
阪口「ところで束の高さは合っているのか?」
和田「大丈夫! ちゃんと計算したから!」
中山「その計算がアテにならんのだよ」
和田「ぐ……、わかった! じゃあ垂木1本上げて! 合ってなかったら直すから!」
 そこで垂木を1本だけ屋根に上げて、南側の1カ所に垂木を渡し、現場合わせで束の高さをチェックする。すると案の定であった。母屋の高さがばらばらで垂木がうまく載らないのだ。
和田「…………。直すから ちょっと待っててね」
水野「やっぱり計算合ってなかったのね」
阪口「オマエ……、工学部だったんだろ?」
和田「関係ないし!」
一同「あるだろ!」
 どうやら高さが合わない母屋が載っているすべての束を45㎜短くすることにしたらしい。しかし、これがのちに大失敗であったことが判明する……。

とりあえず垂木を1本上げて、高さを見てみる。この時点で合ってないというのは通常あり得ないんだが……。

 ともあれ助っ人一同は手持ちぶさたなので垂木の「そぎ切り」を進めることにした。軒のせり出しは半間(910㎜)で計算してそれぞれ切り出し、それもサッサと終わってヒマな一同に新たな指示が飛んだ。
和田「ヒマそうだから垂木彫り入れてって!」
阪口「え! 入れてなかったの?」
和田「入れてない!」
中山「やっぱりコイツは究極の現場合わせ野郎だな」
和田「もちろん! 現場合わせが一番、間違いがないからね!」
阪口「まったく。垂木彫りなんて組む前にやっといたほうが断然ラクじゃんよ。ブツブツ……」
中山「なんだよ、この手ノコ。全然切れないじゃんよ」
水野「手ノミもダメなんですけど」
 和田家の大工道具はすべからくなまくらである。なぜなら和田の馬鹿力が、そのなまくらを余裕でカバーするからである。つい先日も、切れない手ノミを使っていた和田が金槌で左手親指をひっぱたいて泣いていたが、ようするに「馬鹿力ゆえのなまくら道具」なのである。
中山「というわけで、和田にとって馬鹿力は諸刃の剣なんだよな」
水野「単にものぐさなだけなんじゃないの?」
阪口「馬鹿力がものぐさを助長しているとも言えるな」
和田「なに? なんか言った!?」
一同「なんでもないデス!」

垂木の「継ぎ」は両端までが150㎜程度の「そぎ切り」にして、「突きつけ」に重ねて、上からビス留めする。

そぎ切りの垂木は、「軒側を下、棟木側を上」にして重ねるのがポイント。

和田から、垂木彫りの墨付けの手伝いに呼ばれ、担当・水野も梁に上がる。なぜか、木材がちょうど目線に。

母屋と小屋組みの取り合いは、丸太梁と棟木を固定するらしいが、壁とのすき間はどうするのかな。

垂木彫りはカメラマン阪口も含め総出で。

棟木や母屋に加工される「垂木彫り」は簡易的な小屋などでは省略してもいい。

あまりに切れないので手ノミを研ぐ。少し前にも同じような光景があったような……。

一律で45㎜カットが致命傷に!

 さて束の修正作業も終わり、昼食を挟んで一気に垂木を打っていこう……、と思ったら、なにやら和田の表情が冴えない。
和田「いろいろおかしいなぁ……。南側はぴったりなのに、北側は合わないんだよなぁ……」
 ブツブツ言いながらアチコチを測っている。その表情には、次第に険しさが増していった。いったいどうしたというのか……。聞くのもはばかられるが、あえて尋ねてみたら驚愕の事実が判明した。
 ついさっき短くした束の上に、実際に垂木を載せてみたら、なんと45㎜も足りない(つまり垂木の高さに届いてない)場所があるというのだ。垂木なんていうのはムリヤリ打ち付ければ、20㎜程度の誤差はなんとかなるものだが、45㎜はさすがにひどすぎる。そこで焦った和田が、アチコチチェックしたところ、3本あるうちの2本の母屋で北側が下がっていることが判明したのだ。

まったく高さが合ってない! いったい何年DIYやっているんだオマエは……。

屋根のアチコチを測り直す。だんだん表情が険しくなる。

 普段は快活すぎるほどの和田が珍しくドンヨリと落ち込んでいる。そりゃあそうである。
中山「こういう失敗って著しくモチベーションを下げるよね」
水野「でもさ、修正はできるんでしょ?」
中山「修正しようにも、どこを基準にしていいかわかんないんだよな、この家は」
 そうなのだ。すべてがテキトーなこの建物では、基点にするべきポイントが定まらないのだ。侃々諤々(かんかんがくがく)の議論の末……。
阪口「床は?」
 おお。そうだった。テキトー施主の施工で唯一正確だったのが、珍しくピッタリ出ていた床面の水平だったではないか。さっそく問題がある母屋の1本を天端から床面まで南側と北側でそれぞれ測ってみる。すると……。
・南側……2525㎜
・北側……2480㎜
 南側のほうが45㎜高い。
阪口「このズレってさっきカットした分だよね」
水野「でも、母屋の南側はぴったり合ったんでしょ」
和田「わかった! 南側の梁が5寸角材で北側が3寸5分角材だったんだ!」
 5寸(150㎜)と3寸5分(105㎜)。その差はピッタリ45㎜である。
 最初につくった母屋は、その差をちゃんと計算していたのに、あとから増設した2本の母屋(44回で掲載)では、すっかり失念していた。だから後付けの母屋2本は、建てた段階ですでに北側に傾いていたのである。にもかかわらず、南側の束だけを測って、すべての束を均一に短くしてしまったので、最終的に北側が45㎜も短くなってしまった……というわけだ。
阪口「もう何がなんだかわからないんですけど……」

束に木っ端を挟むという安易なリカバリー

 ともあれ、ナゾが解けたところで、さて、どうやってリカバリーするべきか。
阪口「いったん全部の母家と棟木を床から測り直して、正確に計算し直すしかないんじゃないの?」
 確かにイチからやり直すのはアリだが、はっきり言って面倒くさい。もっと楽な方法はないものか?
中山「間違った母屋ごとなかったことにしちゃうってのは?」
 おお。なんとも斬新な案である。もともと垂木に届いていないのだから「ないのと同じ」という発想だ。しかしそれだと強度が落ちてしまい、膨大な重量のかかる草屋根を支えられるのか疑問である。
 そこでさらに楽ちんな案が採用された。それは「北側の梁に載っている桁の下に木っ端を挟んでかさ上げする」という方法である。これなら束を外して1本1本長さを合わせる必要もなく、最小限の作業で済むというものだ。
和田「そうだね。それでいこう!」
 この案に喜々として乗ったのは、ほかでもないテキトー施主和田である。さっきまで暗く沈んでいた顔に、一気にアンパン○ンのツヤが戻ってきた。
 早速インパクトドライバーを手に解体作業を始める和田である。しかしここでもまた、大問題が立ちはだかった。深くナナメ打ちした120㎜ビスを抜くには、あまりにもトルクが強すぎて、ビスの頭をなめてしまうのだ。経験がおありの方も多いと思うが、これは非常に厄介である。頭をなめてしまったビスは、もうインパクトドライバーでは抜けない。和田の背には悲壮感すら漂いはじめる。
和田「だめだ! カケヤとって!」
 業を煮やした和田が叫んだ。そして阪口が差し出すカケヤをひったくると、ものすごいイキオイでぶっ叩き始めた。しかし長ビスが3本も打ち込まれた束は、なかなか外れない。もはや建てているんじゃなくて解体しているようである。
阪口「これじゃあ『棟上げ』じゃなくて『棟下げ』だな」
中山「うまいねえ。座布団一枚!」
水野「……ていうか、なんかかわいそうになってきちゃった」
 そう。それはもはや哀れを誘う光景であった。今まさに建築中の我が家を壊すとは……。自業自得とはいえ、失笑を通り越して憐憫(れんびん)さえ感じる助っ人一同である。
中山「ああっ! 泣いてる!?」
 なんと和田の目に涙が……!?
一同「もしかして悔し泣き!?」
和田「泣いてないから! ゴミが目に入っただけだし!」
 結局、木っ端をかませてなんとかツジツマを合わせたテキトー施主であったとさ……。

いったん取り外すことに決定し、すぐさま作業に取りかかる。なめまくるビスに苛立ちを隠さないテキト-施主。

バールでも試みるが外れず、背中に悲壮感が漂い出す。

泣き崩れる和田。

ビスが完全になめちゃったので力技で勝負に出る。こうなったらヤケクソである。

頭がなめて無惨に折れ曲がったビスを取り上げて、なぜか笑っている中山(写真左)。挟む木っ端を手に、やはりうれしそうな中山(写真右)。

いったん取り外した母屋の下に、45㎜の木っ端をかませる。これでなんとか調整できた。

 

文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥

過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回  壁の施工、窓の取り付け
第12回  差し鴨居 
第13回  外壁
第14回  はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
第19回 内装工事
第20回 水回りの施工
第21回 トイレの設置
第22回 下水管の接続
第23回 下水管の接続
第24回 キッチンの施工
第25回 トイレ後日談
第26回 キッチンの施工
第27回 土壁塗り
第28回 内装&焼き杉
第29回 漆喰塗り
第30回 洗面所の施工
第31回 洗面所の施工
第32回 風呂の施工
第33回 給湯器の取り付け
第34回 混合栓の取り付け
第35回 浴槽の設置
第36回 サッシ窓の取り付け
第37回 内装や配管など
第38回 薪ストーブの設置
第39回 薪ストーブの設置
第40回 出来栄えチェック
第41回 DIY座談会&和田邸プレイバック
第42回 玄関づくり-刻み
第43回 玄関づくり-組み上げ
第44回 玄関づくり-組み上げ
第45回 玄関づくり-床張り

人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com

 

 

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