前回、あまりにいろいろうまくいかなくて、ついに泣き出してしまった施主・和田である。なんとか収まりもついたので屋根作業再開(←「泣いてないから!」by和田)。
掲載:2020年4月号
1つ目の新機軸「タルキーネジ」登場
テキトー施主・和田のテキトーぶりが遺憾なく発揮された棟木(むなぎ)と母屋(もや)の誤差であったが、「梁(はり)と桁(けた)の間に木っ端をかませる」という、これまた安易な調整で、なんとか収まりがついた前回の作業である。気を取り直して屋根施工の続きを始めよう。
今回からは垂木(たるき)打ち。そぎ切りした垂木を途中で継いで、ビス留めしていくのである。できあがったばかりの床に足場を組んで、さっそく作業を始める。
阪口「こういうときは、床が先にできているとスムーズだよね。ストレスなく作業できるって大事」
中山「脚立がガタガタするのってホント怖いよね」
水野「脚立から落ちるケガは多いらしいですね。厚労省によりますと、毎年30人弱の労働者が『はしご等』からの墜落・転落により亡くなっているそうですよ」
一同「皆さんも気をつけましょうね!」
和田「勝手にまとめないで!」
そんなことで垂木材をジャンジャン運び上げてビス留めである。ここで登場したのが、今回の新機軸、「タルキーネジ」だ。
和田「すごいでしょ! 友達の家の施工で使っているのを見てまねしてみたの!」
阪口「5寸釘と同じサイズってことは15㎝のビスなのね。ビスは12㎝が最長だから、まさに必要は発明の母ですな」
水野「ところでさ、なんで頭の穴が十字じゃなくて四角なの?」
中山「四角いほうがなめにくいから、より強いトルクで打てるんですよ。最近の充電式電動工具は18ボルトが主流になって、インパクトドライバーもパワーとトルクが増したから実現したと思われる」
水野「そうなの阪口さん?」
阪口「そうだと思います」
中山「なんでいちいち阪口に確認するんだよ(怒)」
水野「えーだって、中山さんはイマイチ信用できないんだもん」
中山「ちくしょー……」(←かつてのテキトー星人)
そんなことで垂木打ちは順調に進み、日が暮れたので今回の作業は終了した。
和田邸オリジナル草屋根に2つ目の新機軸登場
そして次回作業。
和田邸に顔を出すと、すでに屋根の下地となる野地板が張り終わっていて、すっかり家らしく見える。
水野「進んだねえ。煙突の立ち上げもよくできてるし」
阪口「それにしても母屋のキッチンの換気扇が壁にあって排気が玄関小屋の中に吹き込むって……。どうなのよ」
中山「まったく無計画に増築した証拠ですな」
水野「揚げ物したらすごそう……」
和田「いいの! どうせウッドデッキなんだし! あとウチは揚げ物しないから!」
阪口「じつは唐揚げが好物のくせに」
和田「ぐ……。いいから作業して!」
今回の作業は破風板(はふいた)の取り付けからスタートである。規定の長さに切って突き付けで屋根の側部(妻側)に打っていき、その上に水切り金物を取り付ける。ここまでの作業は手慣れたものである。
そしてここから和田邸オリジナル「草屋根(?)」の施工に取りかかる(草屋根と言っていいのかわからないが、ここでは草屋根としておく)。
改めて「草屋根」の構造を確認してみよう。下の図の通りで、防水用のアスファルトルーフィングと防根(ぼうこん)シートを2層に張った上に土盛りする予定だという。
和田「一番心配なのは雨漏りなんだよね。それで、今回購入したのがこれ!」
ここで和田が自信満々に持ち出した今回2つ目の新機軸が粘着層付きのアスファルトルーフィングである。ホームセンターなどにも並んでいる従来の安価なアスファルトルーフィングが、タッカー(ホチキスのデカイやつ)で留めていくのに対して、これは下地の野地板にべったり貼り付けられるので、タッカー穴からの雨漏りリスクはゼロ。強風ではがされる心配も少ない。さらに「改質アスファルト」と言って、従来のものに比べて耐久性が高いのもポイントだ。
和田「ただ、ちょっとお高い! 一般的なルーフィングが3000円ちょいなのに、同じ面積で1万3200円!」
水野「珍しく奮発したじゃない」
阪口「うちは、2回もルーフィングが風で飛ばされたからな。あのときの被害額は数万円だったけど、それより何度も寒い屋根で同じ作業が続くのがきつかった……」
水野「防根シートって?」
和田「名前の通り、草の根が貫通しないためのもの!」
阪口「にしては薄くね? ぺらぺらなんだけど」
和田「いや、じつは正しい防根シートってめちゃくちゃ高いのよ。竹の根を防ぐためにも使われるくらいでさ。で、ネットでいろいろな草屋根の施工事例なんかを見て、塩ビシートで代用することにしたの」
水野「選挙の投票所なんかで床に敷かれているシートね」
施工方法としてはこうだ。まず野地板の上にルーフィングを張っていく。もちろんタッカーは使わない。その上に強力な防水両面テープで塩ビシートを重ね張りするのだ。
阪口「これじゃ屋根全面を張るには足りないんじゃね?」
和田「母屋に接する屋根の上部は、草屋根にしないことにしたから、普通の安いルーフィングでいいの!」
水野「要するにケチったわけね?」
つまり、土を載せない屋根上部は、「おフランス製」の屋根材「オンデュビラ」仕上げ、屋根の中央部が草屋根で、軒に近い下部はアスファルトシングルという変則的なものだ。
阪口「ホントにこれで大丈夫なのかと……」
和田「わかんない! ダメなら問題が出たときになんとかするから、いい!」
中山「その思い切りのよさだけは評価するよ」
和田「『だけ』ってなに!?」
中山「しかもそれが、たまに化ける(ツボにはまってうまくいく)からね」
和田「『たまに』は余計だし!」
水野「でもさ、雨降ったら土が流れちゃうんじゃないの?」
和田「そう! だから軒にこれを取り付ける!」
和田が示したのは10㎝幅に切り出した金属のメッシュ板「エキスパンドメタル」である。これにL字金物を溶接して屋根に取り付け、土留めと排水をしようというのだが……?
下地張りで施主・和田が意外にも几帳面に!?
さっそく防水層となる粘着層付きのアスファルトルーフィングを張っていく。作業は、たまたま遊びに来た近所の農家、柴田さんも強制参加で進められる。
和田「そこ! シワになっているから直して!」
中山「うるせえな、ちょっとくらいいいだろ」
和田「ダメ! 直して!」
柴田「最初の1mだけきちんと張れば大丈夫ですよ。あとはもう動かないからさ」
さすが農業用ビニール張りで培ったノウハウを持つ柴田さんである。しかし軒ギリギリの作業なので手元がおぼつかなく、「最初の1m」がなかなかうまく張れない。脚立の上から作業するが、やはり少々のシワができてしまう。その上に張る、ぺらぺらの塩ビシートも薄くて張りにくい。
和田「シワが気になるなあ……」
水野「なに。アタシのこと!?(怒)」
一同「違うから!」
阪口「いいじゃんよ。どうせ隠れるんだからさ」
和田「いや! やっぱり気になる! やり直し!」
中山「ていうかさ、なんでいきなり几帳面なの?」
和田「こういうのキッチリしてないとダメな性格なんだよね!」
一同「どうでもいいところでキッチリしてんじゃねーよ!!」
次回、意外にもシャレオツにできあがってしまった、和田邸オリジナル「ポール・スミザー的ガーデニング屋根(?)」が、ついにお披露目!?
文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回 壁の施工、窓の取り付け
第12回 差し鴨居
第13回 外壁
第14回 はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
第19回 内装工事
第20回 水回りの施工
第21回 トイレの設置
第22回 下水管の接続
第23回 下水管の接続
第24回 キッチンの施工
第25回 トイレ後日談
第26回 キッチンの施工
第27回 土壁塗り
第28回 内装&焼き杉
第29回 漆喰塗り
第30回 洗面所の施工
第31回 洗面所の施工
第32回 風呂の施工
第33回 給湯器の取り付け
第34回 混合栓の取り付け
第35回 浴槽の設置
第36回 サッシ窓の取り付け
第37回 内装や配管など
第38回 薪ストーブの設置
第39回 薪ストーブの設置
第40回 出来栄えチェック
第41回 DIY座談会&和田邸プレイバック
第42回 玄関づくり-刻み
第43回 玄関づくり-組み上げ
第44回 玄関づくり-組み上げ
第45回 玄関づくり-床張り
第46回 玄関づくり-小屋組み
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com
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