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田舎暮らしの本 5月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

玄関づくり-建具【予算200万円】DIY経験しかないスタッフが廃材で家を建ててみた【51】

前回までに「4枚建て掃き出し窓」を取り付けた和田邸。今回も建具の取り付けだが、なんとここで思わぬ伏兵が……。果たしてうまくいくのか!?

掲載:2020年8月号

引き戸と掃き出し窓が入って完成も間近の下屋だが、やはり梁(はり)の下がりが気になるぞ。

晴天の霹靂! ピッタリはまる引き戸

 今回は西側の木製引き戸の取り付けである。
 こちらはサッシではないので、敷居(引き戸の下枠)と鴨居(引き戸の上枠)をそれぞれ加工する必要があるのだが、このうち鴨居のミゾは廃材の差し鴨居(構造材を兼ねた鴨居)に切ってあるのを流用することにして、敷居のほうはレールを取り付けて、引き戸に付属の戸車で動かすらしい。
 ここでまたしても和田がご満悦の表情で運び出してきたのが、やはり解体現場からもらってきたという4枚建ての木製引き戸。無垢材使用の、なかなか重厚なものだ。
中山「これは買うと高そうだね」
水野「すりガラスが大正ロマンぽくてステキよね」
和田「おっほっほ!」
 さてこれを仮留めしたレールの上にはめてみる。
 高さはピッタリである。引き戸の大きさに合わせて鴨居を入れたのだから当たり前だが、和田邸では青天の霹靂ともいうべき珍事である。
中山「おお。珍しくもくろみ通りじゃないか」
水野「ピッタリはまるなんて信じられない」
和田「まあね! おっほっほ!」
 さらにご満悦の和田である。しかしそのアンパンマン的笑顔が曇りはじめたのは直後のことであった。

解体現場からレスキューした引き戸にご満悦のテキトー施主。

意気揚々と据え付けてみる。高さもピッタリ。喜びもひとしお。

引き戸が途中で動かない! 即断即実行であちこちを削る

 一度引き戸を外して、戸車にシリコンスプレーをたっぷりと吹きかけ、レールの上を滑らせてみる。
 気持ちよく開きかけた引き戸であったが……、なんと途中で引っかかって動かなくなったのである。
和田「あれ? あれ? なんでだろ!?」
 ガタガタ。ガタガタ。
 ガタガタガタガタ!!!
一同「おいおいおい!」
 力任せに引き開けようとする和田を助っ人一同が必死に止めた。
中山「ガラス割れちゃうでしょ。まずは原因を確かめないと」

戸車に合わせたサイズのレールを購入して規定の長さに切断、仮留めする。この辺まではすこぶる順調だったが……、この先で暗転。後ろにはヒマなのでネコを愛でる担当・水野。

和田家DIYで必須のシリコンスプレーをたっぷり吹きかけて動かしてみる。

引き戸を滑らせてみる。和田の右手側には問題なくスムーズに可動(右の写真)。しかし反対側にスライドさせていくときつくなり、ついにまったく動かなくなった。

 そこで敷居と鴨居の収まりを確認してみる。
 敷居側はレールと戸車だから問題ないはずである。とすると鴨居のミゾが細いのか、それとも建具に問題があるのか……。
和田「わかった! 鴨居のミゾを広くする!」
 即断即実行の和田が、道具箱から手ノミと金づちをひっつかんでくると、引っかかりの原因と覚しき部分を叩き落としはじめる。
 ガンガンガン!
 ガンガンガン!
和田「これで大丈夫!(ぜえぜえ)」
 もう一度はめてみる。
 引っかかりはいくぶんマシになり、可動範囲が広がったものの、解消したというには程遠い。
和田「わかった! 引き戸のほうも削る!」
 ここでも即断即実行である。すぐさまトリマーを準備すると、引き戸の上桟の切り欠き(戸首)を拡張する作業にとりかかる。
 ブイ~~~ン……。
 ブイ~~~ン……。
和田「できたし!(ぜえぜえ)」
 そして再チャレンジ。

決断するが早いか、鴨居のミゾを叩き落とす。テキトー施主にとっては「熟慮=時間の浪費」なのである。

次にトリマーで戸のミゾを削り落とす。まさに電光石火。

全開放しない引き戸の原因はケヤキの暴れ!?

 確かに引っかかりは、かなり改善された。しかし可動範囲はそれでも3分の2程度。完全に開ききらないのだ。
和田「おかしい! なんでだろ!?」
 どうやっても全開放しない引き戸……。その原因は、じつは意外なところにあった。
阪口「鴨居自体が曲がってるとか?」
 おお。そこであったか。
 確かに脚立に乗って水平ににらんでみると、鴨居全体が微妙に反っているのがわかるのだ。かつては真っすぐであった差し鴨居も、数十年の歳月によってねじれが生じてしまい、一直線だったミゾも、微妙なカーブを描いている。これには普通気づかない。
中山「けっこう反ってるねえ……。目測で右に1㎝くらいかな」
阪口「ケヤキは暴れるっていうからね」
和田「わかった! じゃあミゾを切り直す!」
 言うが早いか墨壺でガイド線を打つと、丸ノコを取り出して刃を上に向け鴨居にあてがい、一直線にミゾを切り込んでいく。さらにトリマーで不要な部分を削り落とし、手ノミで仕上げ。
阪口「気持ちがいいほどテキパキしているな」
和田「何事も行動しないとね! 悩んでいる時間がもったいないでしょ!」
中山「お前はもっと悩んだほうがいいぞ」

鴨居を水平に「にらむ」と微妙な歪みが見えてきた。これが原因だったか。

鴨居全体が右に緩く曲がっている。緑色で示した凸部の真ん中に丸ノコの切れ目を入れ、その右側をカットする。

丸ノコで切り込んだ線に沿ってトリマーと手のみで欠き落とす。起死回生なるか。

テキトー施主に後悔の文字はない!?

 ここで基本事項のおさらいを。
 敷居、鴨居のミゾは「四七(ししち)のミゾ」といわれていて四分(約12㎜)の間隔をあけて、七分(約21㎜)のミゾを両脇につくるのが一般的である。
 和田邸の廃材鴨居にも、この割合でミゾが切ってあるんだが、反りを矯正するためにミゾを切り直すことになった。そうすると中央部に残すべき四分の凸部が、ペラペラになってしまったのである(下のイラスト参照)。
中山「薄いなあ。二分(約6㎜)しか残ってないじゃんよ(笑)」
阪口「しかもミゾが広すぎるとガタつくんだよな」
和田「まあいいよ! どうせ作業スペースだし!」
 テキトー施主の辞書には「後悔」の2文字は存在しないらしい。

 

修正の結果「四七のミゾ」が「二八のミゾ」になってしまった……。

引き戸の戸車が1つ欠落していたので、在庫から似たようなものを選び出して取り付けた。物持ちのよい施主である。

水野「ところで、そこのガラスはどうするの?」
阪口「あれ? そこ入ってないんだ。ものすごくキレイなガラスが入っているのかと思ってた」
中山「どう見ても抜けているだろ」
和田「角が割れた掃き出し窓のサッシガラスがあるから、それを切って入れるつもり」
阪口「あとさ、外側の引き戸は相変わらず引っかかったままだけど、いいの?」
 そうなのだ。引き違いのもう片方の引き戸は、ミゾがそのままなので開ききらないのである。
中山「そのままはめ殺しってことで……」
和田「いや! そっちもあとでミゾ広げるから!」
阪口「地震が来たら、ものすごい勢いでガタつきそうだな」
水野「震度2でも震度5かと思っちゃうよね」
中山「じゃあ震度4なら震度7か……そりゃ怖いな」
一同「恐怖が倍増する建具って、どうなのよ!?」
 次号は、壁の施工、そしてついに薪ストーブの設置工事に突入だ!
編集長・柳「ていうか大団円は?」
一同「さあ……!?」

なんとか全開放できるようになった。そこですべての引き戸をはめ込んでみる。

ものすごくキレイなガラスがはまっているのかと思ったら単に抜けているだけだった……。

 

文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥

過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回  壁の施工、窓の取り付け
第12回  差し鴨居 
第13回  外壁
第14回  はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
第19回 内装工事
第20回 水回りの施工
第21回 トイレの設置
第22回 下水管の接続
第23回 下水管の接続
第24回 キッチンの施工
第25回 トイレ後日談
第26回 キッチンの施工
第27回 土壁塗り
第28回 内装&焼き杉
第29回 漆喰塗り
第30回 洗面所の施工
第31回 洗面所の施工
第32回 風呂の施工
第33回 給湯器の取り付け
第34回 混合栓の取り付け
第35回 浴槽の設置
第36回 サッシ窓の取り付け
第37回 内装や配管など
第38回 薪ストーブの設置
第39回 薪ストーブの設置
第40回 出来栄えチェック
第41回 DIY座談会&和田邸プレイバック
第42回 玄関づくり-刻み
第43回 玄関づくり-組み上げ
第44回 玄関づくり-組み上げ
第45回 玄関づくり-床張り
第46回 玄関づくり-小屋組み
第47回 玄関づくり-草屋根
第48回 玄関づくり-草屋根
第49回 玄関づくり‐草屋根
第50回 玄関づくり-サッシ窓

人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com

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