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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月1日(金)
890円(税込)

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玄関づくり-壁&雨どい【予算200万円】DIY経験しかないスタッフが廃材で家を建ててみた【52】

前回までに引き戸が取り付けられた和田邸の玄関下屋。今回は壁の施工だったはずなのに、なぜか雨どいにシフトしていき……!?

掲載:2020年9月号

当初は想定していなかった窓が、いつの間にかはめ込まれていた。

施主の気まぐれで作業がムダに!

 約2カ月ぶりに訪ねた和田邸。すっかり初夏モードで、冬枯れていた草屋根も緑に覆われている。そして玄関下屋にはいつの間にか窓が取り付けられていた。
阪口「あれ? 北側に腰高窓入れたんだ?」
和田「余っているサッシがあったからね!」
中山「ホントに自由気ままだな、ここの現場は」
阪口「筋交いをあらわしにするところが今風だね」
水野「ここって、以前にあたしが胴縁材(どうぶちざい)を入れたよね?」
和田「ああ! あれね! 邪魔だから撤去した!」
水野「ムカつく……」
 またしても施主の気まぐれで作業がムダになってしまった。
 ほかに変わったことといえば靴置きが設置されたのと、電源が取り付けられたことだ。
阪口「コンセントの差し込み口が2つ並んでいるのはなんで?」
和田「なんとなくかな!」
中山「どうせ余っていたんだろ?」
和田「それもある!」
一同「意味わかんねーし!」

立派な(?)靴置きと、なぜか2つ並んだコンセントの差し込み口。こちらもいつの間にかできていた。

 そして今回のメイン作業である壁の施工である。
和田「仕上げはこんな感じでよろしく!」
 和田が見本として示したのが最近、飼いはじめたというヤギの小屋である。板を張り付けたうえに、見切りを格子状に取り付けて仕上げるという。
阪口「うまくできてるじゃん」
水野「でもなんで誰も通らない側につくったの? きれいに仕上げても意味ないのに」
中山「そこまで考えてなかったんだろ?」
和田「ぐ……。ホラ! 試しに仕上げてみただけだから! 本番はこれからだし!」
 そして一同は玄関下屋の内壁に戻る。
中山「へええ。立派な板材だねえ」
 よく見ると幅1尺5寸(約455㎜)ほどもある一枚板を二枚重ねしたもので、格子一つひとつに細かい細工が施されていることがわかるのだ。
和田「古民家の解体現場でもらってきた天井板!」
水野「格(ごう)天井っていうの? 銭湯とかお寺でよく見るよね」
阪口「昔の家はホント、お金と手間がかかっているねえ」
和田「並べて張っていくだけでいいから」
中山「板と板の合わせ目のすき間がすごくね?」
和田「大丈夫! 見切り材付けるから!」
中山「いや、それにしてもさ……」
和田「大丈夫! 気になるのは最初だけ! 多少アラが見えても、すぐなじんじゃうから!」
 どうやら先行して建てた母屋のテキトーな仕上げが、住んでいるうちに気にならなくなり、それが悪しき先例となっているらしい。
阪口「やっぱり幸せの尺度が低いな、この家は」
水野「でもそれって、ある意味幸せなことだよね」
中山「『足(た)るを知る者は富(と)む』ってね。老子の言葉ですよ」
和田「そう! まさにそれ! 足るを知らないとね!」
一同「お前はケチなだけだろ!」

見本のヤギ小屋の壁。和田のアイデア「格子天井」仕立ての「格子壁」だが、単に壁の下地なのかと錯覚するほど安っぽい。

天井絵が描かれたお寺の格天井。和田の壁とは大違いだ。

「ちゃんと測ったし!」と豪語していたわりには全然寸法が合わない。よって下地材を継ぎ足すことに。

と思ったら、和田がステープルを指に突き刺すというアクシデント発生。しかも飛び出したステープルはそのまま……、そのうちなじむからいいらしい。けがにはくれぐれも気をつけよう。

普段は雑用係の担当・水野も壁張り作業に奮闘。だが、丸ノコに慣れていないせいか、「カタツムリよりトロい」とみんなから言われる始末。

窓枠の仕上げの化粧材をカットして、取り付ける。

相じゃくりの時給は1200円!

 そんなことで壁材を張っていくことになったんだが、ラクな内壁は一瞬で終わってしまい、作業は面倒な妻壁(つまかべ)に移行する。野地板(のじいた)を規定の長さに切って張っていくだけの単調な作業である。
水野「そういえば一番安い野地板はやめたのね。虫食いでボロボロの“腐れ野地板”ってやつ」
和田「あれね! あれは相(あい)じゃくりにしたら働き幅があまりに少なくてやめたの!」
 そこで買い直したのが幅8寸(24㎝)の荒床材。これだと働き幅が大きいので相じゃくりしてもそれほどムダがない。
和田「中山さん張ってって! 私は相じゃくりマシーンと化しますから!」
 そしてミゾ切りカッターで板の両面にしゃくりを切っていく和田である。
中山「相じゃくり板は絶対買ったほうが安いよな」
阪口「2割増しくらいで買えるからね。カンナもかけてあるし」
中山「材料の金額からざっと計算してみたんだが。今回使った荒床材が3坪分(24枚)で5940円。相じゃくりの加工代2割は24枚で1188円。24枚を1時間ほどで加工し終えてたよね」
阪口「てことは時給にすると約1200円か……。悪くないな」
中山「ああ。意外と悪くない……って、どっちだよ!?」

「相じゃくりマシーン」と化した和田がひたすらミゾ切りカッターで相じゃくる。

相じゃくりしたもの。板の幅によって「働き幅」が変わってくる。

 妻壁張りは建築作業のなかでも、最もめんどくさい工程の1つなので、テンションが上がらず、ダラダラ作業が続く。
中山「やりたくねー」
阪口「めんどくせー」
水野「つかれたー」
一同「ほかの仕事がいい」
和田「……わかった! じゃあ雨どいやって! 雨どい!」
 業を煮やした和田が、再びガラクタの山から運び出してきたのは、いつ、どこでもらってきたのかも忘れてしまったという銅製の雨どいであった。
中山「おお! 掘り出し物だな!」
阪口「高級品だねえ。リサイクルで高く売れるんじゃね?」
水野「なるほど。売れたお金で塩ビの新しいやつを買うわけね」
和田「それは、ない!」
阪口「アレはないの? 鎖みたいなのが下がっていてさ、水が伝って落ちるやつ」
水野「『鎖(くさり)どい』っていうみたいですよ」
和田「いいねえ! 下に水鉢置いてメダカでも飼おうかな!」
 一気にテンションが上がる一同である。

面倒な妻壁の施工は、結局のところ「現場合わせ」が一番早かったりする。

高い天井付近は、高所恐怖症の中山に代わって担当・水野が梁に乗って作業する。

廃材の山から引っ張り出してきた銅製雨どいは、ゴミが詰まって汚いことはなはだしいが、銅だけに磨けば光る!?

勾配をつけた雨どいだが、流れのキレが悪い……

 まずは銅製雨どいを洗浄する。ネット情報では塩を加えた酢で磨くとピカピカになるらしい。またしても担当・水野が雑用を引き受け、雨どいの掃除にいそしんだ結果、ピカピカとまではいかないが、そこそこキレイなツヤが出てきた。
 雨どいは水勾配がキモである。垂木(たるき)の「せい」(木口の高さ)を目一杯使って勾配をつけ、両端のとい受けを設置。これに水糸を張り、糸の高さに合わせて中間のとい受けを取り付けるという手順だ。
中山「試しに水流してみようぜ」
 さっそくバケツに水をくんできて流し入れてみる。
阪口「お……、流れてる流れてる」
 勾配を伝って流れはじめた水は、途中で若干の滞留を見せつつも、徐々に下ってタテどいに落ち、驚くほど長い時間をかけて滴り落ちはじめた。
水野「ずいぶん時間がかかるね。こういうもんなの?」
中山「キレが悪いな。まるでおじいちゃんのおしっこみたいだな」
和田「施工したの中山さんでしょ!」
 作業はすっかり壁の施工から雨どいに移行してしまったのであったが……。次回、雨どいの施工はさらにエスカレート。複雑怪奇なタテどいが取り付けられることになるのだが、いったいどうなる!?
和田「銅だけに!?」

金切りバサミで雨どいを規定の長さに切断。とい受けの位置決めのために端っこの部分を試しに載せてみた。

両端にとい受けを取り付けたら、水糸を張って水勾配を見ながら、残りのとい受けを取り付ける。雨どいを載せれば完成だ。

水を流してみる……。ユルユルと、といを下っていった水は、やがてだらしなく滴り落ちる。

そして完成したタテどいは、なんとも複雑怪奇な形状をしていたのであった……。詳細は次回で!

 

 

文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥

過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回  壁の施工、窓の取り付け
第12回  差し鴨居 
第13回  外壁
第14回  はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
第19回 内装工事
第20回 水回りの施工
第21回 トイレの設置
第22回 下水管の接続
第23回 下水管の接続
第24回 キッチンの施工
第25回 トイレ後日談
第26回 キッチンの施工
第27回 土壁塗り
第28回 内装&焼き杉
第29回 漆喰塗り
第30回 洗面所の施工
第31回 洗面所の施工
第32回 風呂の施工
第33回 給湯器の取り付け
第34回 混合栓の取り付け
第35回 浴槽の設置
第36回 サッシ窓の取り付け
第37回 内装や配管など
第38回 薪ストーブの設置
第39回 薪ストーブの設置
第40回 出来栄えチェック
第41回 DIY座談会&和田邸プレイバック
第42回 玄関づくり-刻み
第43回 玄関づくり-組み上げ
第44回 玄関づくり-組み上げ
第45回 玄関づくり-床張り
第46回 玄関づくり-小屋組み
第47回 玄関づくり-草屋根
第48回 玄関づくり-草屋根
第49回 玄関づくり‐草屋根
第50回 玄関づくり-サッシ窓
第51回 玄関づくり-建具

人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com

 

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