前回までに壁と雨どいの取り付けが終了した和田邸。最後の作業は薪ストーブの据え付けだ。これにて4年半におよぶ大活劇連載「出張! 人力山荘」も、めでたく有終の美を飾る……のか!?
掲載:2020年11月号
倒壊の危機や施主の裏の性格も表出
中山「連載54回目となりました今回ですが、ついに最終コーナーですな」
水野「最初に『人力山荘』の連載がスタートしたのは2008年6月号で合計37回。次の『帰ってきた人力山荘』が2013年11月から合計27回だから、この和田邸の『出張! 人力山荘』が今までで一番長い連載となったわけですが、なんでなの?」
和田「もちろん! ネタが豊富だから!」
阪口「DIY歴10年とは思えないような失敗が続出したからな」
水野「話題が尽きなかったよねー」
中山「オレがここの現場で学んだ最大のことはリスク管理の重要性」
水野「なにそれ?」
中山「ちゃんとやらないとガチで死ぬんだなってこと」
和田「そ、そんなことないから!」
中山「いや、あの丸太梁の棟上げで、単管パイプの三脚がひん曲がっているのを見たとき、本気で倒壊するんじゃないかと思った」
和田「だ、大丈夫だってば!」
阪口「一度、足場が崩壊して助っ人が落っこちかけたよな」
水野「和田さんのいい加減なところとか、見栄っ張りなところとか、裏の一面がいっぱい出た連載だったよね。知りたくはなかったけど」
現場合わせで写した線は、ヨレヨレでわからない
中山「まあそんなことで薪ストーブでも据え付けましょうかね……。よっこいしょういち(←古い)」
重い腰を上げて作業を始めよう。
DIYで薪ストーブを設置する際に必ず問題になるのが「屋根の雨仕舞い」と「煙突の断熱」である。
まず1つ目のハードル「屋根の雨仕舞い」だが、すでに複数回の設置経験がある和田だけに段取りは完璧だろう……と思いきや?
和田「今回はフラッシングを自分でつくろうと思ったんだけどステンレスの煙突が薄すぎて溶接しようとしたら熱で溶けちゃった」
「フラッシング」というのは屋根と煙突の接合に使う部材のことで、通常5万円程度する。そこで溶接機を駆使して自分でつくろうと画策したわけだが、素材が薄すぎて見事に失敗したらしい。その代わりにチムニー(角煙突)を立ち上げたのは、48回で報告済み。
今回は、屋根に煙突を貫通させる際の室内側、つまり天井側に化粧鉄板を取り付けるのだが、この鉄板に開ける穴は当然、天井が傾斜しているがゆえに楕円形になるわけである。しかし、その計算式がわからない……。そこで和田が考えたのが、煙突と同じ径で丸めたトタン板を屋根勾配に現場合わせして切り出し、それを化粧板にする鉄板に当てて型を取るという作戦であった。
和田「現場合わせに勝るものはない!」
一見すると正しいやり方のようだが、実際にやってみるとトタンを丸めて固定するのが極めて困難である。いろいろ試行錯誤するうちに和田の表情が険しさを増していく……。
中山「適当に楕円形に切っちまって調整するほうが早いんじゃないのか?」
阪口「……まあ、施主のやり方を尊重しましょう」
温かい(冷ややかな?)目で助っ人一同が見守るなか、ようやく鉄板に開けるべき楕円形の下絵ができあがった。
和田「できたし!(ぜえぜえ)」
苦心して描いた楕円形は、しかし、ヨレヨレの線でよくわからない。
和田「もっとこうかな……。いや、こっちのほうがもう少し太かったな!」
そうやって線を描き足していくうちに、結局テキトーに描いた楕円形と大して変わらない出来栄えとなってしまった。それは次回で判明する。
さっそくヨレヨレの線に沿ってジグソーの刃を入れて、楕円形にくり抜いた。
阪口「今さら言うのもなんなんですが」
和田「今度はなに!?」
いかにも煩わしそうに言う和田の表情に一抹の不安がよぎる。
阪口「その鉄板ってさ、取り付ける方向って決まっているよね?」
どういうことかといえば、楕円の長径は屋根の勾配に平行でないとダメなわけである。もしも、取り付ける鉄板の方向が90度間違っていたら……。
和田「いや! 大丈夫! こっちで間違いない!」
断言する和田であったが実際は……、これも次回で判明する。
煙突の断熱材を「不燃」と言い張る和田だが……
もう1つのハードル「煙突の断熱」はどうするのか。これについては秘策があった。
和田「断熱二重煙突を自作する!」
「断熱二重煙突」というのは文字通り二重構造になった煙突で、内部に断熱材が充填されていて熱が外に逃げにくい。このため上昇気流が起きやすい、煤がたまりにくい、安全性が高いなどの利点がある。欠点は高価なことだ。
和田「なにしろ1mで5万円以上するからね。4mの煙突だと20万円もする! 今回の自作は全部コミで約8000円! 圧倒的に安い!」
具体的には下の図のような構造になるわけだが、要するに二重の筒の間に不燃材のパーライトとロックウールを詰め込んで断熱しようというものだ。
パーライトは畑で使われる土壌改良材で、細かく砕いた軽石のようなもの。ロックウールというのは有害物質が含まれない石綿のようなものである。
施工としては二重煙突の下端部にロックウールを詰め込んでふたをし、薪ストーブに設置して、上からパーライトを流し込むという作戦である。
阪口「これさ、ホントにロックウールなのか?」
和田「間違いない! 『不燃』って書いてあったから!」
自信満々の和田であるが、どう見てもグラスウールである。
中山「奥多摩の作業で散々使っていたのと同じなんだけど」
阪口「『難燃』って書いてあったんじゃないの?」
和田「いや! 確かに『不燃』って書いてあった!」
ここでも自説を曲げない和田である。
「まあじゃあそうなんだろう」ということで、二重にした煙突の中に詰め込む。これが「超」の付く大失敗であったことは、これまた次回で判明するのであるが、それはともかく……、とりあえず煙突を立てようということで、煙突が垂直になるように確認しながら薪ストーブの位置を微調整。そして仮留めから一度外した化粧鉄板を通して二重煙突を据え付ける。
中山「やっぱりこれ、ただのグラスウールじゃ……」
和田「しつこい! 『不燃』って書いてあったの!」
二重煙突を薪ストーブに差し込んだら、屋根の上からパーライトを流し込む。これを中山と担当・水野が下で支える。
水野「なんか上からパラパラ落ちてくるんですけど」
中山「パーライトだけに?」
水野「つまんなくて死にそう」
中山「そうそう。オジサンがダジャレ言うのって一種の老化現象なんだってね。若い人は我慢できるけど、オジサンは我慢できなくて口に出してしまう。それがオヤジギャグ」
水野「じゃあ中山さんもオヤジなわけね」
中山「当たり前田のクラッカー(←またまた古い)」
和田「つまんないこと言ってないで! ちゃんと支えて!」
中山「OK牧場(←またまた古い)」
阪口「誰かこのオジサンをなんとかしてください」
オヤジギャグ連発の現場には冷ややかな空気が流れ、大団円は次号に持ち越し!
編集長・柳「まだ続くの? 冗談はヨシコちゃんでしょ?(←これがいちばん古い?)」
文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回 壁の施工、窓の取り付け
第12回 差し鴨居
第13回 外壁
第14回 はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
第19回 内装工事
第20回 水回りの施工
第21回 トイレの設置
第22回 下水管の接続
第23回 下水管の接続
第24回 キッチンの施工
第25回 トイレ後日談
第26回 キッチンの施工
第27回 土壁塗り
第28回 内装&焼き杉
第29回 漆喰塗り
第30回 洗面所の施工
第31回 洗面所の施工
第32回 風呂の施工
第33回 給湯器の取り付け
第34回 混合栓の取り付け
第35回 浴槽の設置
第36回 サッシ窓の取り付け
第37回 内装や配管など
第38回 薪ストーブの設置
第39回 薪ストーブの設置
第40回 出来栄えチェック
第41回 DIY座談会&和田邸プレイバック
第42回 玄関づくり-刻み
第43回 玄関づくり-組み上げ
第44回 玄関づくり-組み上げ
第45回 玄関づくり-床張り
第46回 玄関づくり-小屋組み
第47回 玄関づくり-草屋根
第48回 玄関づくり-草屋根
第49回 玄関づくり‐草屋根
第50回 玄関づくり-サッシ窓
第51回 玄関づくり-建具
第52回 玄関づくり-窓と雨どい
第53回 玄関づくり-雨どい
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com
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