玄関も完成して、ついに最終回。にもかかわらず、やらかすのが施主・和田だ。薪ストーブから異臭がただよう始末。さて、4年半におよぶ大活劇「出張! 人力山荘」が、めでたく「有“臭”(ゆうしゅう)の美」を飾れるのか!?
掲載:2020年12月号
最後もラッキーな施主!? 無事にはまった化粧鉄板
ついに大団円となる、この連載。最終回は、屋根上の断熱二重煙突の据え付け作業だ。前号で天井まで取り付けた煙突を延伸させ、雨仕舞いをすれば、晴れて薪ストーブの設置完了である……と、そういえば、前号で懸案だった、仮留めしただけの化粧鉄板はどうなったのか?
和田「大丈夫! なんとかなったし!」
楕円形にくり抜いた煙突穴は、大きめにつくったのが功を奏して、ところどころにすき間ができたものの案外とスッキリはまった。
さらに阪口が「間違ってね?」と指摘した鉄板の方向は、やっぱり間違っていたのだが、90度回転させたら、なぜか「ほぼピッタリ」はまってしまったのである。
和田「理由はともかく、結果オーライだし!」
中山「最後の最後まで失敗から学ばないヤツだなコイツは」
阪口「でもさ、天井側も屋根と同じように四角い箱にすれば、面倒な楕円くりぬきとか、しなくてもよかったんじゃね?」
和田「……まあそうなんだけどさ!」(←じつは今気づいた)
テキトー施主に阪口がついに悟りを開く?
そんなこんなで天井までの断熱二重煙突が完成したので、残る作業は屋根上の煙突の据え付けである。
まず、煙突に穴が開いたフタを被せる。次に下から突き出した二重煙突に内煙突を継ぎ足して延伸、さらに外煙突になる排気ダクトをかぶせる。煙突は長ければ長いほど煙の抜けがいいわけだが、屋根上に長く延ばした煙突を安定させるためには支持金具が必要。
和田「わかった! すぐつくる!」
思い立ったら即実行。ほかの作業をすっ飛ばして、やにわに屋根から飛び降りると、幅3㎝、長さ3m程度の平鋼をひっつかんできて、草焼きバーナーに点火。
シュゴーーーー!!
噴出する炎を平鋼に当てること1分ほど。皮手袋をはめて外煙突用排気ダクトの切れ端に押し当ててグニャリと曲げる。水に沈めて粗熱を取れば完成だ。
和田「できたし!」(ぜえぜえ)
さっそく屋根に上って即席の支持金具を煙突に合わせてみる。適当な長さで力任せにひん曲げ、鉄工ドリルでビス穴を開けて、母屋の破風板に取り付ける。
寸法を測るなどの精密作業は一切ナシ。すべて現場合わせ。20分とかからずに「煙突支持金具」ができあがった。
中山「いつもながら、このスピーディーかつテキトーな作業には敬服するよ」
水野「ほめてんの? けなしてんの?」
中山「両方かな」
しかしテキトー施主の快進撃もここまでであった。
屋根上での作業を再開した施主が、なにやらブツブツ文句を言うのが聞こえる。そのうちバタバタと脚立から下りてきて、作業小屋の道具箱をひっくり返す。取り出してきたのは、数年前に極太の丸太梁に金物を通すための穴をドリルで開けたとき以来の登場となる「釣り竿アタッチメント」であった。
なぜそんなものが必要なのか。じつはこういう事情であった。
断熱二重煙突の外煙突をビス留めする段階になり、それを固定するL字金物のビス穴が角煙突のフタに近接しすぎてインパクトドライバーが入るすき間がないことが判明。そこで長いアタッチメントの登場となったわけである。
中山「ドライバーで手回しという選択肢はなかったのか?」
和田「……それでもよかったんだけどさ!」(←じつは今気づいた)
ともあれ無事に二重煙突が据え付けられ、パーライトを流し込んで、最後に煙突トップを取り付ける……。明らかに不格好である。なぜなら、自作の断熱二重煙突は150㎜径なのに対し、煙突トップは内側の煙突に付いていて106㎜径のものだからバランスが悪いのである。
和田「なんかカッコ悪いな!」
阪口「まあ、いいんじゃないの」
想定外の出来の悪さに不満そうなテキトー施主であったが、気を取り直して、最後の作業に取りかかる。
和田「やっぱり断熱二重煙突は黒じゃないとね!」
そう。高級煙突といえば「ツヤ消し黒」である。満を持して用意しておいたスプレー塗料を吹き付けるテキトー施主。しかし外煙突に代用した亜鉛メッキ鋼板製の排気ダクトは、塗料のノリが非常に悪かった……。せっかくの塗装が「単なる汚れ」のようになってしまったではないか。
水野「新品なのに煤けたみたいだね」
阪口「まあ、いいんじゃないの?」
中山「オマエ、さっきからそればっかりだな」
阪口「ここの現場で悟りを開いたからね」
ついついツッコミを入れたくなってしまう和田家の現場だが、そこをグッとこらえるうちに、ついに悟りが開けた(?)らしい阪口であった。
点火した薪ストーブからとんでもない異臭が!?
そしてお待ちかねの薪ストーブに点火。
断熱二重煙突がつくり出す強力な上昇気流で気持ちがいいくらいに排煙され、ほっておいても炎がガンガン強くなる。
一同「おお。さすがだねえ」
喜びに浸る一同である。
しかしそのうち、鼻を突く刺激臭に、一同顔をしかめる。
水野「なんか臭くない?」
阪口「しかも、からだに悪そうなニオイ」
よく見ると煙突の付け根の部分から、うっすらと煙が上がっているではないか。
思い当たるのはただ1つ。和田が「不燃性」だと強弁していた、例の断熱材である。あれはやはり、ただのグラスウールだったのではないか?
一同「やっぱり!」
和田「『不燃』って書いてあったような気がするんだけどなぁ……」
水野「最後の最後までやらかしてくれるよねー和田さんは」
阪口「まあ、いいんじゃないの?」
中山「これじゃあ『有終の美』じゃなくて『有“臭”(ゆうしゅう)の美』だな」
編集長・柳「うまい! 座布団3枚!」
水野「ということで、長らくご愛読いただきました『出張! 人力山荘』、このへんでお開きとさせていただきます。お後がよろしいようで!」
玄関下屋部分でメンバーのお気に入りは?
文/中山茂大 写真/阪口 克 イラスト/和田義弥
過去記事はこちら!
第1回 基礎工事
第2回 墨付け、刻み
第3回 柱、梁、桁の刻み
第4回 棟上げ目前
第5回 棟上げ
第6回 棟上げ
第7回 棟上げ
第8回 足場組み、家起こし
第9回 屋根
第10回 屋根材張り&プロによる中間チェック
第11回 壁の施工、窓の取り付け
第12回 差し鴨居
第13回 外壁
第14回 はめ殺し窓、下見板
第15回 床の施工
第16回 荒床張りと電気の引き込み
第17回 ウッドデッキ
第18回 天井張り
第19回 内装工事
第20回 水回りの施工
第21回 トイレの設置
第22回 下水管の接続
第23回 下水管の接続
第24回 キッチンの施工
第25回 トイレ後日談
第26回 キッチンの施工
第27回 土壁塗り
第28回 内装&焼き杉
第29回 漆喰塗り
第30回 洗面所の施工
第31回 洗面所の施工
第32回 風呂の施工
第33回 給湯器の取り付け
第34回 混合栓の取り付け
第35回 浴槽の設置
第36回 サッシ窓の取り付け
第37回 内装や配管など
第38回 薪ストーブの設置
第39回 薪ストーブの設置
第40回 出来栄えチェック
第41回 DIY座談会&和田邸プレイバック
第42回 玄関づくり-刻み
第43回 玄関づくり-組み上げ
第44回 玄関づくり-組み上げ
第45回 玄関づくり-床張り
第46回 玄関づくり-小屋組み
第47回 玄関づくり-草屋根
第48回 玄関づくり-草屋根
第49回 玄関づくり‐草屋根
第50回 玄関づくり-サッシ窓
第51回 玄関づくり-建具
第52回 玄関づくり-窓と雨どい
第53回 玄関づくり-雨どい
第54回 玄関づくり-薪ストーブ
人力社
ライター中山とカメラマン阪口、 ライター和田の旅とDIYを得意とする3人組トリオ。「人力山荘」シリーズでは中山の母屋リフォーム、中山のアネックス新築DIY、和田の自宅新築DIYを連載。阪口も自宅をDIYで新築している。
人力社HP➡www.jinriki.net
阪口HP➡https://www.sakaguti.org
和田HP➡http://www.wadayoshi.com
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