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田舎暮らしの本 6月号

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田舎暮らしの本 6月号

5月2日(木)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

君たちはどう生きるか/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(48)【千葉県八街市】

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 11月22日「トイレでジャーと流した瞬間、流したものがその後どうなるかを考える人はほとんどいない」。冷たい風が吹く日が続いたが、今日は無風で快晴。洗濯物は落ちたりせず、カラッと爽やかに乾いたので嬉しい。落ちたりせず嬉しい・・・そう言うのは、僕は洗濯ばさみで留めるということがどうしてもできない。紐に引っ掛けるだけ。よって、風に吹かれてパンツやモモヒキが落ちて、ときにはナマズの池で漂うなんてこともあるのだ。さて我がルーチン。起床後、鶏たちの世話をして、ランニングに行って、朝食してからぐるっと畑を見回る。その見回り先で便意を催すことがある・・・ごめんね、こんな話。でも、あとでわかるようにこれはシビアで大事なことに絡んでいるのだ。前に書いたと思うが、僕の便意は朝食後15分で正確にやってくる。しかし時にはそれより早く、畑を見回っている時にやってくる。その場合のために、畑には何か所か穴が掘ってある。石鹸も置いてある。その穴には定期的に枯草を投げ込む。今朝は、その、ふだんよりも早い便意の到来という日だった。それで思い出したのだ。数日前の朝日新聞「世界のトイレ事情知ってますか」という記事。僕は知らなかったが、11月19日は国連が定めた「世界トイレの日」らしい。安全でちゃんとしたトイレのない暮らしをしている人は世界で34億人、うち4億人は自宅や近所にトイレがなく、道端や草むらで用を足しているという。それをなんとかしたいと手を差し伸べたのがシャワートイレのメーカー「リクシル」で、用を足すときにパカッと弁が開き、排泄物や水が流れるとピタッと閉まる軽いプラスチック製のものであるらしい。日本で近代下水道の建設が始まったのは1880年代。明治時代になって都市部に人が集まり、汚水による伝染病が流行したことがきっかけになった。その下水設備が現在、老朽化に直面。耐用年数15年を経過したものが多いのだという。朝日の記事には、アフリカやアジアでのトイレを研究する京都大学大学院の原田准教授の活動が紹介されていた。その原田准教授が言う。トイレでジャーと流した瞬間、流したものがその後どうなるか考える人はほとんどいない・・・。戦後しばらくまで、農村では下肥が野菜の肥料として使われていた。それ以前、江戸時代には人間の糞尿を買い集めて農家に届けるという業者もいた。前回、『肥料争奪戦の時代』という本を引用し、リンのことを書いたが、人間の糞尿にはかなりのリンが含まれていることを僕はそこで知った。こうした日本の伝統、それに待ったをかけたのが終戦後に駐留した米軍だった。彼らは日常的に口にしていたレタスを日本でも食べたいと思った。それで、たしか、神奈川県の農家にだったと思うが、レタスを作ってくれと依頼する。しかし彼らは、その農家の肥料が下肥由来だと知り、驚く。それでもって提示したのが化学肥料だった。これなら清潔・安全だというわけだ。

 クサイ話が長くなってしまったが、どうです、アナタは、ジャーと流した後の自分のものがどこに行くのか、考えたことはありますか? 最近は下水の汚泥から良質な肥料を作る試みもなされているらしい。君たちはどう生きるか・・・生きることの根源は、まず食べること、そして、食べたら出すこと。さらには人間の生活と環境がどうかかわっているのか、いくらかでも考えてみること。何をどう食べるか。食べ方を間違うと人生がちょっと危うくなる。さらに、食べたけれどなかなか出ないとなると、もっと危うくなる。当たり前のことであるがゆえにいちいち深くは考えないが、食べる、出す、それこそがどう生きるかの基本ベースに違いない。正しく食べて正しく出す。そして考える人になる・・・どう生きるかの理想であろう。少し補足する。女性は男よりも便秘の人が多い。さらに、大腸癌に罹患する率も男よりも高い。そのことを理解するには下水管を例に取るとわかりやすい。近所の家はどこも汚水タンクの洗浄を専門業者に委託している。僕は自分でやる。台所のシンクから流れ伝わってきた油や料理のカスは下水管に付着する。ほっておくと付着物は肥大し、腐敗へと進む。かなり厄介ではあるが、定期的に重いコンクリートのふたを開け、長い棒の先に大きな布を縛り付けたもので根気よくゴシゴシとやる・・・。便秘とは腐敗物の体内蓄積だと考えればその怖さが分かる。ウンチがスッと出た後の爽やかさ・・・それをもたらすのは野菜と運動、精神のあっけらかんさである。

 無風、ポカポカ天気の中で発送作業に励む。静岡行きの荷物の中身は大根、生姜、カボス、サトイモ、サツマイモ、ピーマン、ジャガイモ、シークワーサー、チンゲンサイ、長ネギ、そして卵。荷造りを終えたのは4時。まだ仕事はあるが、その前に、夕食の準備をしておく。上の写真の緑は時無し大根の葉っぱ。僕は時無し大根は葉っぱを食べるためにあえて密にまく。とても柔らかいのだ。それに加え、牛肉とヤマイモを用意し、すりおろした生姜を入れて煮込む。すこぶる美味だ。時無し大根の下の写真は商品にならないチビのジャガイモ。このふたつの品は、すべての作業を終えて部屋に戻る午後6時には太陽光発電につないである電気釜の中でほどよく仕上がっている。風呂に飛び込む前、チビのジャガイモは指先でもってくるっと皮をむき、マヨネーズか胡麻ドレッシングで食べると美味。チビながら数が多い。だから結構手間なのだが、すぐそばで、早くオイラにも食い物くれよと猫のブチが作業ズボンの裾に爪をかけているのだが、もうちょっと待っててくれ、これが終わったらやるから・・・食うことに手抜きをしない、これが我が信条である。ヘッドランプを灯し、野菜たちに防寒を施し、今日も1日が暮れたのであった。

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